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嫌煙権運動35周年…全面禁煙 先進国の潮流

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 嫌煙権運動が今月18日、35周年を迎えた。運動が始まった当時に比べ、成人男性の喫煙率は半分以下に減り、公共の場所や交通機関の禁煙化の取り組みは進んだが、飲食店などでの不完全な分煙をはじめ、受動喫煙による健康被害を防ぐための課題は依然多い。

 嫌煙権運動は1978年、新幹線こだま号に禁煙車が1両しかなかったことに対し、「全ての列車の半数以上を禁煙車に」という要請を掲げ、東京都内で集会が開かれたのが始まりだ。80年に東京地裁に提訴された嫌煙権訴訟は87年、判決で原告側の訴えは退けられたものの、判決時には列車の禁煙化が30%にまで進んだことから、「実質勝訴」として控訴せずに確定した。

 旗揚げ集会に参加した渡辺文学・タバコ問題情報センター代表理事は「環境権などと並ぶ基本的な人権の一つであるとの訴えで始まった運動だったが、たばこの害について社会全体の意識が低かった当時において、規制が進む大きなきっかけになった」と振り返る。

 この35年間に、公共交通機関では旅客機が禁煙になったのをはじめ、鉄道も一部を除いて禁煙化された。タクシーは乗務員による訴訟がきっかけとなり、2000年代後半に一気に禁煙化が進んだ。敷地内禁煙とする病院や学校も増えた。

 受動喫煙による健康への影響は、科学的研究でも明らかにされてきた。肺がんのリスクが高まることを示した研究論文は数多い。また、06年に飲食店等のサービス産業を含む屋内を全面禁煙とする法律が施行されたスコットランドの研究では、心筋梗塞が17%減少したと報告された。

 世界保健機関(WHO)により05年に発効した「たばこ規制枠組み条約」は、指針で、締約国に対し建物内を全面禁煙とする法的な措置を求めている。アイルランドやイギリス、イタリア、フランスなど主要先進国は2000年代に相次いで、公共の建物などを禁煙とする受動喫煙防止法を定めた。

 一方、日本は、同条約を批准したにもかかわらず、法的な措置は遅れている。公共の場所での受動喫煙対策を定めた03年施行の健康増進法は、罰則のない努力義務であり、飲食店などの禁煙化は進んでいない。

 分煙ではなく全面禁煙が必要な理由として、受動喫煙対策に詳しい大和浩・産業医大教授(健康開発科学)は、「分煙では受動喫煙を防ぐことはできない」と説明する。大和教授が、国の基準に従った換気扇付きの喫煙室で行った実測でも、人の出入りなどにより大量の煙が漏れていることが確認された。喫煙席と禁煙席の間に仕切りのない飲食店では、禁煙席の汚染も深刻なレベルにあった。

 分煙よりも全面禁煙にした方が、コストの面でも有利との研究もある。厚生労働省研究班(班長=望月友美子・国立がん研究センターたばこ政策研究部長)の試算では、全面禁煙だと、たばこ税収の減少などが生じる反面、喫煙休憩時間の削減や喫煙による死亡の防止などプラスの経済効果があり、合計約4兆円のプラス。これに対し分煙は、費用などで合計約1兆3000億円のマイナスだった。望月部長は「全面禁煙化は、たばこをやめる動機にもなるうえ、社会全体の生産性の向上につながる」と話す。

 嫌煙権という市民運動に後押しされた受動喫煙対策は、科学的根拠に支えられ、国際条約に基づく国としての取り組みが求められる時代となった。日本でも、屋内を全面禁煙とする主要先進国並みの法的な受動喫煙対策が求められる。(医療情報部 田村良彦)

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