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あなたと家庭医

からだコラム

[あなたと家庭医]話を聞くという「治療」

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 「先生、実はね、私、死ぬ準備をしてたのよ」と私に語った女性がいました。2011年8月、宮城県の仮設住宅でのことです。

 その夏から、PCATという医療のボランティア団体で、私のような家庭医や看護師、薬剤師、臨床心理士らによる「お茶っこ健康相談」という会を仮設住宅で始めていました。

 「お茶っこ」とは東北弁で茶飲み話のことです。9か月間で12回開催し、計500人以上の被災者の相談にのりました。

 私が驚いたのは、みな語りたい、語る相手を欲しているということでした。中には2時間くらい話し続ける人もいました。

 私たちは言わば部外者です。でも医療の専門家、心の専門家が話を聞いてくれる、ということが安心感を与えたのでしょうか。私たちはとにかく話を聞き続けました。そのことを通して、傾聴するということが、これほど治療的効果をもち、深い信頼関係を築くのだということに改めて気づかされました。

 「死ぬ準備をしていた」と打ち明けた女性は、その後2回、3回と会ううちに、表情が明るくなり、うつ状態は改善していきました。地元の保健師と連携しながら、このような方を多く見守り、ときには医療機関へつなげるという活動は、家庭医の私には実にやりがいのあるものでした。

 活動を終えた後、仮設住宅の自治会長さんから手紙が届きました。「私たちが自立することが、支援をして下さった皆さんへの恩返しです。見ていて下さい、必ず自立してみせます」。もうすぐ、あの震災から2年がたちます。これからも被災地を応援し、見守っていきたいと思います。(孫大輔、家庭医療専門医)

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