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[切断肢の火葬]失った手足 お骨で残せる

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 不慮の事故や糖尿病性壊疽(えそ)などで、手足を失う人は少なくない。そうした切断肢はその後、どうなるのか。火葬してお骨を残し「切断のショックが和らいだ」という人もいるが、こうした方法はあまり知られていない。病院が十分な説明をせずに焼却処理を進め、トラブルになる例もある。

病院で説明なくトラブルも

四肢用の小さな骨つぼを手にする中村さん(東京都杉並区の日葬祭典で)

 切断肢の処理について、患者や家族が、骨を残さない「完全焼却」を希望し、病院で同意書に署名すると、出入り業者などが火葬炉や医療廃棄物用の焼却炉に持ち込み、処理する。だが「あの世では元の健康な体に戻りたいので(手足の)お骨を残しておき、私が死んだ時、遺骨に混ぜてほしい」と希望する人もいる。こうした願いに応えるのが四肢の火葬だ。

 実は対応する火葬場は多い。例えば、東京都の港、目黒区など5区が共同運営する臨海斎場(大田区)では、5区の住民は5000円、それ以外の人は1万5000円で四肢の火葬ができる。お骨を納める小さな骨つぼも料金に含まれる。

 同斎場では、火葬を求める医師の依頼書など所定の書類があれば、本人や家族が火葬を直接依頼できる。

 個別の持ち込みに対応しない火葬場の場合は、葬祭業者に代行を依頼する方法もある。だが、四肢などの火葬はあまり知られていないため、臨海斎場でも利用数が少なく、昨年4月から12月末の間で16件だった。

 杉並区で葬祭業を営む日葬祭典は、年間10~15件の四肢の火葬を代行している。同会長の中村和男さんは「私の経験では、火葬のことをきちんと説明する病院では、約半数がお骨を残したいと希望する。しかし、説明の手間を省き、そのまま完全焼却のサインだけを求める病院もある」と指摘する。

 病院の不十分な説明と不適切な対応が、家族の心を大きく傷つけることもある。都内の60歳代の女性は、2011年末、気付かぬうちに左足の化膿(かのう)が進み、緊急手術で左足を切断したが、間もなく敗血症で死亡した。手術の直前、夫は左足を完全焼却する承諾書に署名したことを悔やんでいる。「病院から火葬の説明はなく、混乱して何も考えられないまま書いてしまった」

 女性の死後、左足は返されたが、その日の晩、他人の足だったと分かった。女性の足は、すでに医療廃棄物用の炉で焼かれ、戻らなかった。そして後日、処理費用2万5200円が請求された。夫は「妻の体の一部がゴミのように処理されたかと思うと、悔しくてたまらない」と病院への不信感を募らせる。

 こうした問題を受け、中村さんは昨年11月「人間の尊厳を守る会」を結成し、ホームページにトラブル例を掲載するなど活動を始めた。「遺体の一部しか残らない大惨事では、その一つ一つをひつぎに入れて火葬し、弔っている。人の体はそれくらい尊いものなのです。どの病院でも、火葬の選択肢が選べるように、広く訴えていきたい」と話している。(佐藤光展)

糖尿病性壊疽
 糖尿病が進行すると、足先などの血行が障害されて、小さな傷が治らずに潰瘍化する。更に悪化すると、組織が壊死(えし)してしまう。糖尿病が原因で足を切断する人は国内で年間3000人を超える。
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