文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

こころ元気塾

ニュース・解説

生きる意味 医師と考える…がん哲学外来 精神的に支援

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 日本人の3人に1人が亡くなる「がん」。発症すると、手術や抗がん剤などによる治療で生活は大きく変わり、家庭や仕事などに不安を抱える人も少なくない。そんな患者や家族を精神的に支える「がん哲学外来」の活動が各地に広がっている。

カフェ形式も 患者から本音

参加者は日ごろの悩みや不安を医師に相談する(盛岡市の岩手県立中央病院で)

 がん哲学外来は、病理学が専門の順天堂大医学部教授、樋野興夫(ひのおきお)さんが病院内でアスベストによる中皮腫の専門外来を3か月間担当した経験から始まったものだ。出会った患者の多くは生きる希望を失い、悩んでおり、樋野さんは「患者と同じ目線で対話し、相手のために時間を割くことが必要」と感じた。個別面談で対話しながら、生きることの意味を共に考える「がん哲学外来」を2008年に、同病院内に期間限定で開設すると、当初の予想を大幅に超える患者が訪ねてきた。

 その後、趣旨に賛同した各地の医師や薬剤師らが病院や薬局などを拠点に「がん哲学外来」の活動を広げている。樋野さんも可能な限り各地に出向き対話を重ねている。

 患者がより足を運びやすいように、カフェ形式で活動する施設もある。岩手県立中央病院(盛岡市)は11年12月から月1回、「メディカル・カフェ」を開く。毎回10人前後のがん患者や家族、がん化学療法科の医師や看護師らが参加。コーヒーや茶菓子のもてなしを受けながら、参加者は医師や看護師らに日頃の不安や悩みを打ち明ける。

 今月18日のカフェには、患者や医療スタッフら16人が集まった。

 この日で2回目の参加という秋田県の主婦(43)は地元の病院で09年秋、大腸がんの手術を受けた。1年後に再発し、岩手県立中央病院で人工肛門を装着する手術の後、2度目の再発が判明。がんが大きいため切除を諦め、放射線治療を何度も重ねた。

 現在は1日2回の抗がん剤を服用しているが、副作用のためか、手首のしびれや足の痛みに耐えられない時もある。主婦は「3人の子どものうち末娘はまだ高校2年生。今後のためにも、自分が今どういう状態なのか、他の医師や患者の意見も聞きたかった」と参加した理由を話す。

 カフェの代表を務める、同病院がん化学療法科長の加藤誠之(さとし)さんは「日常の慌ただしい診察室では、遠慮して語れない、聞けない本音を話せる場にしたい」と語る。

 がん哲学外来に触発され、患者自らがカフェを主宰するケースもある。

 山梨県北杜市の清里高原で月1回開かれる「清里・メディカルカフェ」は、肺がん患者の阿部千鶴さん(59)が代表を務める。

 7年前に切除不能のがんと告げられた阿部さんは、闘病しながら、体調の許す時には家族で営む喫茶店で働く。大きな病気や入院の経験もなく、「健康だった私が、なぜ?」と自問し続けた。抗がん剤が徐々に効きにくくなり、体調も悪化、死への恐れと孤独感に押し潰されそうな時もあった。

 近隣で行われていたがん哲学外来で出会った参加者との交流が励みとなり、自分の闘病経験が何かの役に立たないかと考え、昨年12月からカフェを始めた。

 阿部さんは「がんになり、ずっと一人で悩みを抱え込む人は多いと思う。生きている間に、他の患者の力になりたい」と話す。(野村昌玄)

がん哲学外来
 開設される場所は、今年3月までに東北から九州までの20か所以上となる見通し。各地の連絡先は、樋野さんが理事長を務めるNPO法人「がん哲学外来」のホームページ(http://www.gantetsugaku.org/index.html)で確認できる。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

こころ元気塾の一覧を見る

最新記事