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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

どうすれば死ななくてもよかったの?

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(この質問に返す言葉がありませんでした)

 17歳の少年が高校のクラブ活動の顧問から体罰を受けた後に、自宅で自殺を図った事件は波紋を呼んでいます。市長が体育科の入試の中止を決断したことも大きな注目を浴びました。

 でも私に上の質問してきたのは、若い女の子でした。「入試中止や体罰の解決じゃなくて、私はどうしたらこの子が死ななくてもすんだのかを知りたいんです。どうすれば自殺しなくてすんだの? なんで死ななければならなかったんですか? 誰に相談すればよかったの?」と直撃され、胸が詰まる思いがしました。

 スポーツ指導、子どもの進学、教師や教育委員会のあり方、入試中止の是非など、世の中を動かしたとも言えるほど大きな影響力をもたらした17歳の死でしたが、彼女は「そんなことより、死んでほしくなかった」と言うのです。

 今回の事件で、人間の怒りについて、あらためて考えました。

 自分が感じている感情が怒りであることを、そしてそれがどんなところから発生しているのかを把握できないとき、人は攻撃性が増し、暴力という行為に出ることがあります。精神科の分野で有名なフロイトの考え方に、「中に向かう怒り、自分に向かう怒りが強いとき自殺を図る」というのがあります。自殺は中に向かう最大暴力の結論です。そして外に向かっての感情や攻撃性を激しく抑え込んだときに起こるものでもあります。

 報道によると、この少年は自殺を図る前に家に帰ってきています。母親に向かって普段より明るい声で「ただいま、お弁当おいしかったよ」と言ったとあります。おそらく暴力を受けた後のテンションが上がっていた声だったのでしょう。それが普段より明るく聞こえた。それから母親に、「今日もかなり殴られた」と打ち明けています。親に向けた遺書には「バスケットボールをやらせてくれてありがとう」と書き残し、数日前には問題の顧問あてに怒りの手紙を書いていましたが、出さずに亡くなってしまいます。

 朝、自室で見つかった遺体の顔や唇に体罰の跡がありました。鏡で自分の顔を見てもまだ感情を抑え込んでいたのでしょう。「死ぬ覚悟ができたのでごめんなさい」と言葉を残して逝ってしまいます。

 「どうしたら死ななくてもよかったんですか」は、しばらく私の耳に残って離れませんでした。何かしっかり対峙しなければならないことから、大人は逃げているのではないでしょうか。「自責」ではなくて「他責」、つまり自分ではなくて他の人の責任ばかり訴えることで自分がその問題と葛藤することから逃げている。目をそむけていることを置いといて、他の人の責任を責めていればいくらか気持ちが楽なのではないでしょうか。

 顧問だった男性の激しい攻撃性は何の感情の表出だったのか。暴力的行為になっていく感情は彼のどこから出ていたのか、勝敗が重要視される中で、彼の怒りの表出は間違った方向を向いていると分らせる人は誰だったのか。誰もそんな仕事を引き受けようとはしなかったのか。17歳の子どもに向かって「今生きる世界はここだけじゃない」と言って命を救う役割を担う人は、どこにいたのか。そこをやらずにいて、引き受けないうちは、「どうすればあの子は死ななくてもすんだの?」の答えが見つからないままだと私は思います。

 

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石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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6件 のコメント

法律を教えるか漫画等から教えるかは自由

それだけで十分

連投になります。日本には憲法という六法の礎があります。就労の義務、納税の義務、教育を受ける義務。商法では契約という事項がありますね。取引事項です...

連投になります。
日本には憲法という六法の礎があります。
就労の義務、納税の義務、教育を受ける義務。
商法では契約という事項がありますね。
取引事項ですから、要件を満たす事が必要です。
民法では親子関係という事項があります。
そのほかに、保護者という事もあります。
両親、またはそれに準じる人とでもいうのでしょう。

漫画そのほかの記述には表現の自由の関係で多彩な記述方法があります。
新聞等が使っている用語も法律上のものとは違う事もあります。

体罰、暴力等の記述はそれなりのメディアでの表現だと思います。
調査されれば刑法の傷害に抵触する事もあります。
海外ではこういう事は非常に厳しく判断される地域もあります。
例で言えば、体に刺激等を与えられるのは医師等の特定の人とか。

六法が元で構成されていますからスカウトとはいっても、国内法に準じて行われます。
本契約は責任者と保護者、本人の同意が必要だったと思います。

高校程度の学識と経験で法律のなかでの相互契約で就労として将来スポーツを選ぶもよしですけど、親の目からすれば選手生活出来る期間も問題になる事もあります。

大学なら学校で研究員等で残れるか、就職の際にスポンサー(推薦人等)になってくれるかという事もあります。
保護者の思っている要件を満たして始めて契約の話が進みます。

選手が将来どういう成績になるかは選手自体も未知の世界です。
オリンピックボイコットの時、代表権をもらっていた選手の落胆はすごかったですよ。
私の所属してたところから数名でる予定でした。

ここは質問された少女の事がメインだと思いますし、なにより調査結果を待つしかないと思います。
その結果でまた新しいルールが出来る事を期待しています。
完璧な組織や仕組みはないでしょう。

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未熟な生徒と未熟な教師

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

仕事とは他人の物質的、精神的欲求を満たすことであり、それにより社会の中で対価(生存のために必要な物)を受け取ります。仕事・職業とは一般的にそうい...

仕事とは他人の物質的、精神的欲求を満たすことであり、それにより社会の中で対価(生存のために必要な物)を受け取ります。
仕事・職業とは一般的にそういうものです。

親子関係は、仕事=「子供が存在することで得られる親の精神的な満足」や「親であるという社会的な立場を守る」という特殊な取引関係です。
この状態から、子供は徐々に自立していき大人になります。

人間は商品とイコールではありませんが、そういう側面を持ちます。
(ココが誤解してほしくないところです。)
商品力の持たない大人は「餓死」します。

「働かざる者食うべからず。」
単純化すれば、この言葉で表現できると思いますが、社会が複雑で理解が難しいだけです。
世界最古の職業は売春婦です。
突き詰めれば、そういうことで、どんな仕事でも多かれ少なかれ自分の体や心を切り売りする側面があります。

もう一つ気になるのが、暴力と体罰の混同です。
最近ニュースを見ていると混同されています。
意味が伴っていて、程度が分かっていれば体罰で、ただ一方的なやり方が暴力です。

新聞を見ていると、混同したまま処理されようとしていることに危惧を覚えます。

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スカウト側はみているものです

それだけで十分

生徒を商品と表現するとは驚きです。市立の学校ですから、今回は市長の権限も発動されたみたいですね。課外活動に必ずしもスポーツでこの競技を設定しなく...

生徒を商品と表現するとは驚きです。

市立の学校ですから、今回は市長の権限も発動されたみたいですね。
課外活動に必ずしもスポーツでこの競技を設定しなくていけないと学校法に規定はなかったと思います。

科として体育科などが存在しても、課外活動での評価はその部でどんな事があったかでしょう。
主将をしていた、何の大会に出場、どのような成績だったか程度。
部活の顧問が進学の資料に口出しするのはおかしいです。

漫画の世界と実世界では違います。
スカウトされてスポーツ推薦という事もありますけど、商品として仕入れされる訳ではないと思います。

実際に体育会でスカウトした事がありますが、単純に事は進まないものです。
保護者の決済や教授会等の決済も必要だったと思います。

顧問がどうのというのは、そう関係ない世界。いくら顧問がと言ってもスカウト側は選手を潰すような顧問のところからわざわざ選手を呼ぶことはしないでしょう。

いくら優秀でもその選手は後輩の指導に問題をもっている場合がありますから。
やはり、暴力的問題を起こして退部という事実もみております。

課外授業の運動部は高体連などの組織下にいるはずです。顧問の指導方法やルール改正なども含めての集まりや講習会等があるはずです。今回はそれが有効に働いていなかったのではないでしょうか。上部団体や自治体が調査をしっかりとすべきだと思います。

わたしも子供をもつ親ですから、生徒である子供を漫画の内容や売りだ、商品だと書かれるのには抵抗があります。
どのようなご職業で子供さんがいらっしゃるかは存じませんが。

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