俳優 萩原流行(はぎわらながれ)さん 59
メディアなどでお馴染みの芸能人、有名人だって、一人の人間として病気や心身の不調と向き合っています。苦しかった経験や、病によって気付かされたことなど、率直な思いをお聞きします。
一病息災
[俳優 萩原流行さん]夫婦でうつ(2)妻が発症、引き金は僕
舞台にテレビに多忙だった1988年のある夜、妻のまゆ美さん(60)に異変が起きた。帰宅して声をかけても返事がない。しばらくして「病院に連れて行って」との言葉がまゆ美さんから返ってきた。
「胸が苦しいの。包丁で胸を裂いて苦しみを取り出したいのよ」。そう訴えられた。実は数年前から、睡眠障害や食欲不振、音に過敏になるなど、ひそかに心身のつらさを抱えていたまゆ美さん。それが限界まで達したのだった。
翌朝、病院で「強迫神経症、不安神経症、抑うつ神経症の合わさったもの」と診断され、薬による治療とカウンセリングを始めることになった。カウンセラーには「ご主人のことが病気の引き金」と指摘された。
「僕にも彼女を苦しめてきたという自覚はあったから、罪滅ぼしのつもりで、彼女の好きなようにさせてあげようと思いました」
カウンセリングの際は仕事が許す限り、送り迎えをし、家事ができずに寝たきりでもそっとして、やさしく接するよう心がけた。しかし、いつしか気持ちは離れ、1、2年後には好きな女性ができてしまった。
まゆ美さんが手首を切ったのは、この頃だ。命に別条はなかったが「あなたの心に私がいなくなってる」と言って家を出た。話し合って元の鞘に収まったものの、次は自分自身が、心の病を得ることになった。
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