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(41)認知症の徘徊 無理に止めず

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 認知症の人の徘徊(はいかい)には本人なりに目的や理由があります。無理に止めず、思いを受け止め、とことん付き合ってみるといいですよ。

 公務員だった義彦さん(71歳、仮名)は温和な性格でしたが、1年ほど前からイライラすることが増えました。退職しているのに「仕事に行く」と言って出かけようとする。家族が止めると興奮して暴力を振るい、制止を振り切ってはだしで出て行く。そんなことが度重なって家族は限界を感じ、義彦さんは一時的な入院を経て、私のいた施設に入所してきました。

 入院中は薬で興奮を抑えていましたが、活動レベルも低下して車いす生活になりました。本人らしさを取り戻してほしくて、医師と相談して薬を減らすと、食欲も出て、ふらつきながらも自分で歩けるまで回復。

 ところが、今度は「仕事に行く」「家に帰る」と大声を出し、つえを振り回して暴れます。「ここは自分の居場所ではない」という思いの表れでしょう。出て行きたい気持ちは痛いほど分かるので、とにかくドライブと散歩に連れ出しました。元の職場の周辺を散策したり、行きつけだったそば屋に入ったり、自宅に寄って家族とお茶を飲んだり。外出の前後は必ずスタッフが「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と声をかけました。

 そんな日々を続けるうち、義彦さんに笑顔が見られるようになり、1か月後には自分から「行ってきます」「ただいま」と、満面の笑みであいさつしてくれるまでに。「家に帰る」という言葉も出なくなりました。

 自分のことを理解して、迎えてくれる人がいる。そう確信できたとき、義彦さんにとって施設が「自分の居場所」になったのです。(青山幸広、介護アドバイザー)

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