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拠点病院 津波備え急務
本社調査 34施設浸水恐れ
マグニチュード(M)9級の南海トラフ巨大地震が起きた場合、千葉県から鹿児島県にかけての太平洋・瀬戸内海沿岸にある災害拠点病院の34施設が「津波で浸水する恐れがある」と懸念していることが読売新聞のアンケート調査で分かった。病院と国・都道府県は連携して津波対策を進める必要がある。
新病棟を建設 / 広域連携を模索
災害拠点病院には、地震への備えとして主に建物の耐震化などが国などの補助で行われてきた。しかし、津波対策は明確に示されていないのが実情だ。
「地下の自家発電設備が浸水で壊れた場合、診療のめどは立たなくなる。地下浸水対策を検討している」(神奈川県内の公立病院)
「津波で周りも浸水し、孤立する心配がある。入院・外来患者をどうやって安全な地域に搬送させるかが課題だ」(愛知県内の病院)
最大級の津波を受けた際に「医療機能が維持できるか」との問いに対する病院の回答だ。津波浸水の恐れがある34施設のうち、21施設は、1メートル以上の浸水被害を受けたり、電気設備や検査機器が壊れたりするため医療機能が大きく損なわれる心配があるとしている。
34施設のうち、23病院が浸水対策などの施設工事や新病棟の建設計画などを進めている。
最大で2メートルの浸水の恐れがある順天堂大浦安病院(千葉県浦安市)は、2015年度中の完成を目指し、新病棟の建設を準備中だ。浸水の心配のない建物内に自家発電装置を備えた地震・津波に強い施設となる。
応急措置として昨年5月には、非常用食糧、飲料水などを、1階から、6階建ての屋上倉庫などに移した。救急診療科の松田繁准教授は「医薬品、医療材料はまだ浸水の恐れがある地下倉庫にある。災害時に必要性が高い物を選び出し、安全な場所に移すことを考えている」と話す。
電気と水の供給、医薬品、医療材料の保管、水、食糧、燃料の確保など、検討を要する項目は多岐にわたる。病院は水が引いた後の速やかな機能回復に目標を定め、課題を洗い出し、着実に対策を進めてほしい。
災害拠点病院は、全国から駆けつける災害派遣医療チーム(DMAT)を受け入れ、同じ地域で被災した医療機関にチームを派遣する役割も担う。津波で被災した施設に数多くのDMATが集結し「拠点」とすることは難しい。
徳島県は12年11月、災害拠点病院が被災した場合の代替病院として3病院を指定した。徳島市内の災害拠点病院は、徳島大病院など2施設に浸水の恐れがある。同県担当者は「代替3病院はDMATの集結施設にもなりうる」と話す。他の都道府県でも代替病院の指定は、検討の余地がある。
都道府県の枠を超えた連携を検討する必要もある。
高知市は、地震で地盤が沈降し、津波による浸水が広い範囲の市街地に長期間とどまる心配がある。その場合、同市内の三つの災害拠点病院は、2施設が浸水、1施設は道路が寸断され、孤立する心配がある。
浸水の恐れがあるとする災害拠点病院の近森病院の山本彰呼吸器外科部長は「周りの道路が冠水しているうちは、1週間程度、病院にとどまれる備えをしている」と話す。
広い範囲で被害が出た場合、災害拠点病院を中心とした体制では対処が難しい。高知赤十字病院の西山謹吾救急部長は「傷病人は、ヘリや船などを使い、近隣の他府県に搬送する態勢作りを県に提案している」と広域連携の必要性を説く。
従来の枠組みにとらわれず、国や都道府県、関係医療機関は幅広い見直しを進めるべきだ。
防災マニュアル見直し 半数
東日本大震災で災害拠点病院を含む多くの医療機関に被害が出たのを受け、国は昨年3月、災害医療体制強化の方向性を打ち出した。しかし対応は個々の病院に任されている部分が大きく、アンケートでは取り組みが道半ばであることが浮き彫りになった。
「院内の防災マニュアルを見直す予定はあるか」と尋ねた問いに「はい」と答えた施設は54%の68施設(『既に見直し済み』という回答含む)。また「他の医療機関との間で災害時の連携の取り決めがあるか」との問いに「ある」と答えたのは52%の66施設。ともに半分程度にとどまった。
DMAT事務局の
「整備費は病院側の負担になっているが、昨年度から拠点病院の指定で年間数百万円程度の収入増の措置が認められた。今後の取り組みに期待したい」と小井土局長は話す。(医療情報部 渡辺理雄)
南海トラフ巨大地震 |
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静岡沖から四国、九州沖にかけての浅い海溝(トラフ)沿いで発生する地震の中で、想定されうる最大規模(M9・0~9・1)のもの。国が昨年8月に発表した被害想定では、死者数は最大で32万3000人。 |
災害拠点病院 |
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災害の際、重症患者の救命医療を行うほか、全国から災害派遣医療チームを受け入れて、地域の他病院の支援を行う。2次医療圏ごとに1か所の設置が原則。都道府県が653病院を指定。建物に耐震性を備えることなどが要件。 |
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