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シニア起業家 続々

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利益拡大より社会貢献

安価なレンタルオフィスを拠点に営業するシニア起業家たち(東京都中央区の「銀座アントレサロン」で)

 60歳前後のシニア世代による起業が増えている。定年が視野に入ったサラリーマンが、「年齢に関係なく好きな仕事を」と踏み切る例が多いという。労働力人口が減少に転じ、高齢期も働き続けられる環境作りは、日本の将来にとって欠かせない。シニア起業を支援する様々な取り組みも広がっている。

拠点はレンタル

 東京都中央区にあるレンタルオフィス「銀座アントレサロン」。ずらりと並んだ机1台分の個人スペースは、中高年の起業家らでいっぱいだ。顧客に電話したり、パソコンで営業用の資料をまとめたり。ここを拠点にビジネスを展開する。

 昨年秋にバネ製造会社を退社し、経営コンサルティング会社を始めた江森徹さん(62)も利用者の一人。CFO(最高財務責任者)まで務めた経験を、資金繰りが苦しくなりがちな中小企業の経営支援に生かしたいと、独立した。「年金などで若い世代には負担をかけてばかり。稼げる間は税金を払う側でいたい」と話す。

 4年前まで結婚式の企画に携わっていた樋口健治さん(66)は、2011年8月、妻と結婚相談所「アイライフ」を設立した。小規模相談所のネットワークに加盟し、条件の合う会員を紹介し合う。「大手にできない、きめ細かいサポートを強みにしたい」と戦略を語る。

 サロンを運営する銀座セカンドライフは、シニアを中心とした起業支援を展開している。レンタルオフィスのほか、起業相談や事業計画書作りの手助け、人脈作りのための起業家の交流会開催など、開業の前後を通じてサポート。片桐実央社長は「定年というゴールが見え、本当にやりたい仕事を続けるために独立開業を選ぶシニアが増えている。人脈や体力があるうちに、と踏み切るケースが多い」と話す。

 少子高齢化で労働力人口が減少するなか、高齢者にもできるだけ働き続け、社会・経済の支え手になってもらう必要がある。年齢に関係なく働き続けられる起業は、魅力的な選択肢の一つだ。雇用創出や経済活性化の効果も期待できる。

公的融資制度も

 国もサラリーマン経験のある起業家向けの助成制度(12年度末まで)を設けるなど、後押ししてきた。

 公的な融資制度もある。日本政策金融公庫の「シニア起業家資金」は、55歳以上を対象に最高7200万円を融資。創業後1年までの利用件数は、12年4~9月で616件と、前年同期比で11%増えた。

 公庫では、全152支店に「創業サポートデスク」を設置し、事業計画作りなどの支援も実施。東京、大阪、名古屋の3拠点では、在職中でも利用しやすいよう夜間や週末の相談も受け付けている。

 シニア起業に特徴的なのは、「ローン返済や教育費の支出もほぼ終えているので、利益拡大にこだわらず、社会貢献を重視する傾向がある」(公庫)という点だ。

 公庫の調査(12年度)によると、シニア起業家の開業動機は、「仕事の経験・知識や資格を生かす」が51%で最も多く、「社会の役に立つ」「年齢・性別に関係なく仕事をする」(いずれも36%)が続く。半数以上は年金などほかの収入があり、収入に対する考え方では「できるだけ多く」は27%と少数派。そのためか、採算が「黒字基調」としたのは半分程度で、若い世代を下回る。

 銀座セカンドライフの片桐社長は、「起業自体より長続きさせることが難しい。事務所費用などの初期投資を抑え、低コストでコンパクトに始めることが大事。経験や人脈を生かし、顧客ニーズを見極めて、独自の製品やサービスを提供できるかどうかが問われる」とアドバイスする。

 会社設立には、定款の作成や登記申請などの手続きも必要だ。司法書士の鎌田幸子さんは、「時間があれば手続きは独力でも可能。株式会社なら登録免許税など25万円程度で設立できる」と話している。(滝沢康弘、写真も)

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