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介護・シニア

インプラント…何でもかめる 歯っぴー!

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馬場さん(左)からインプラントの説明を受ける(右から)打谷さんと中野さん(大阪市中央区で)

 中高年が歯を失ったときに、治療法として増えているのが人工歯根(インプラント)を埋め込む手術だ。入れ歯に比べ、違和感なくかむことができ、ブリッジのように残っている歯を削らずにすむので人気がある。どのような治療なのか。2人の隊員が探った。

 探検隊員になったのは、大阪府八尾市の打谷和弘さん(73)と同府吹田市の中野みさをさん(70)。打谷さんは歯が8本欠けており、ブリッジにしている。中野さんはすべての歯がそろっているが、健康な兄(75)の歯が1本急に抜け、不安になった。

 2人は大阪歯科大付属病院(大阪市中央区)を訪ね、口腔(こうくう)インプラント科専任教授の馬場俊輔さん(50)から話を聞いた。同科は年間約400例の手術を手がける。

日帰り手術

 治療は、歯茎を切開し、顎の骨(歯槽骨)に金属のチタン製のねじを埋め込む。骨と結合するのを待ち、その上にセラミック製などの人工歯を取り付ける。取り外しできる入れ歯タイプもある。馬場さんは歯の模型などを使って手順を説明した。「埋め込むねじは直径3~6ミリ・メートル、長さ6~15ミリ・メートルの小さなものです。日帰り手術で、痛みは親知らずを抜歯する場合と同じ」

 打谷さんが「ねじが外れたりしないのですか」と疑問点を指摘すると、馬場さんは「骨が丈夫なうえ、埋め込んでから下顎で2~3か月、上顎で4~6か月たってしっかり結合したら大丈夫。人工歯をかぶせるまでは、仮の歯をつけます」と答えた。

 すかさず中野さんが質問。「入れ歯になって歯槽骨がやせている人はどうすれば」。馬場さんは「骨を増やす治療を事前に行います」と解決法を示した。

 アフターケアが大切だ。普通の歯に比べ、人工歯の方が上部が大きくなるので土台との接合部分に食べかすが詰まりやすい。「きちんと磨かないと歯茎がやせて、インプラントが骨から抜け落ちるインプラント周囲炎になります。歯石除去もこまめにし、長持ちさせてください。私の患者さんは20年もっています。歯ぎしりがひどいと折れるケースもあります」

90歳代でも

 打谷さんが「何歳まで手術を受けられるのですか」と問うと、「90歳代の方でも健康であればOKです。うちでは50歳代以上で8割を占めます。糖尿病がひどかったり、骨粗しょう症の薬を服用しているケースなど無理な場合があります」と話した。

 ただ、保険外診療なので、費用が高くつくのが難点だ。同病院では、検査、手術と人工歯装着で1本当たり35万円から40万円かかる。「格安を宣伝している歯科医もありますが、内容をよく調べ、値段よりも安心を買ってください」

 2人が「どこで手術を受けたらいいのか、迷います」と嘆くと、馬場さんは「治療の流れをきちんと説明し、マイナス面も話してくれることが重要です。一生面倒をみてくれる人を選びましょう」とアドバイスした。

 打谷さんはCT(コンピューター断層撮影)検査を受け、撮影した歯槽骨の画像を使い、どの長さのインプラントが安全に挿入できるか想定してもらった。2人はメンテナンスで重要となるかみ合わせの検査もした。

 打谷さんは「おいしく食べたい。アフターケアをきちんとしてくれるところを選びます」と述べ、中野さんは「慎重に取り組んでもらったら安心です。兄に勧めたい」と話していた。(文・阿片仁孝、写真・金沢修)

「第2の永久歯」

 インプラントは「第2の永久歯」とも言われている。しっかりかめるので、脳を刺激し、老化を防ぐ効果があるという。スウェーデンで1965年から、チタンを使ったインプラント治療が始まった。日本には約30年前に本格導入され、約6万8000ある歯科診療所のうち、2割近くが手がけているとみられる。

 安心できる治療を受ける手がかりとしては、NPO法人・歯科医療情報推進機構が、歯科医の技量と安全体制を評価して交付している「インプラントセーフティーマーク」がある。昨年12月現在で61施設が取得している。

 高額なインプラント治療は「医療費控除」の対象となる。1年間に10万円以上の医療費を払った場合、納めた税金の一部が返ってくる制度で、領収書などを添付して、税務署に確定申告をする。

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