文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いきいき快適生活

介護・シニア

介護の人材確保…処遇改善 緊急の課題

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
昼食の時間を前に、入所者にナプキンをつける飯泉一仁さん(右)(千葉県船橋市の老人保健施設「ロータスケアセンター」で)

 団塊の世代の高齢化に伴い、介護サービスの需要は増大していく。反面、介護の仕事は重労働や低賃金のイメージも強く、慢性的な人手不足に悩む。このギャップが解消されないと、今後の日本の経済・雇用を支える「成長分野」としての期待にも応えられない。処遇改善を始めとする人材確保策が緊急の課題だ。

資格取得で昇給

 「この職場なら、妻と子供2人を支える生活設計が何とか立てられる。やりがいもあり、続けていきたい」。千葉県船橋市の老人保健施設「ロータスケアセンター」の介護職員、飯泉一仁さん(36)が語る。

 5年前、勤め先の不動産会社の経営不振で失業。新たな職探しでは「不況でも介護なら需要がある」と考えてハローワークの研修でヘルパー2級を取得し、同施設に就職できた。3年の実務経験を積み、昨春、介護福祉士の資格も取った。

 未経験者だった飯泉さんの支えとなったのが、同施設が5年ほど前から実施している様々な待遇改善策だ。

 まず、資格や役職に対応した昇給制度。例えば、介護福祉士の資格を取ると基本給が月2万円以上、夜勤手当が1回2000円アップし、以後の昇給も早くなる。各フロアのリーダーなどの役職につくと、さらに基本給が上がる。努力次第でキャリアアップが可能だ。飯泉さんの場合、当初の月給21万円程度が、今は30万円近くになった。

 過重労働を避ける工夫もある。介護職員の残業を減らし、やりがいを高めるため、掃除や洗濯などの雑用を担う補助職員を別に確保。資格を持つ介護職員には専門性のある介護業務に専念してもらう。また、介護技術の研修を充実させ、詳細なマニュアルを作って技術向上を図っている。正しい技術を身に着ければ、心身の負担が軽減され、腰痛などの予防も期待できる。

 待遇改善策の財源として、介護人材確保のための国の補助金なども活用。川端(しん)副施設長は「職員の定着率が大幅に上がった。サービスの質の向上だけでなく、事故のリスク軽減や求人広告費の削減などの効果もある。結果的に安定経営につながっている」と話す。

慢性的な人手不足

 国の推計では、現在149万人の介護職員は、団塊の世代が75歳以上になる2025年度には237万~249万人必要になると見込まれる。さらに100万人近い人材を確保しないと、将来の介護需要に対応できない。

 ところが、現在でさえ介護業界は慢性的な人手不足に悩んでいる。介護労働安定センターの調査では、介護事業所の53%が従業員の不足感を訴える。

 人材が集まりにくいのは、介護の仕事に「低賃金で重労働」とのイメージが強いことが一因だ。実際、同センターの調査では、介護職員の月給は平均22万円程度(11年)で、全産業の平均32万円を大きく下回る。国も介護報酬改定を通じて賃金改善策を講じてきたが、十分とは言い難い。

 人手不足から仕事の負担感も強い。介護職員の離職率は16・1%(11年度)と全産業平均(14・4%)を上回る。

 国は、働きながら資格を取る人の賃金や受講料を公費で負担する「介護雇用プログラム」や、ハローワークでの求職者と介護事業所のマッチング機能強化など、業界に人材を呼び込む対策を打ち出してきた。自治体でも、介護の魅力を伝えるイベントなどの取り組みが進んでいる。

 ただ、人材の発掘と育成の仕組みだけでは、定着は難しい。家計の担い手でも安心して働ける環境の整備こそが重要だ。

 樋口美雄・慶応大教授は「他産業と比べて見劣りしない賃金の確保が欠かせない。さらに、スキルアップの制度と合わせて、技能や経験に応じた昇給を保証する賃金体系が求められる。介護報酬は、職員数だけでなく質も評価して算定する仕組みに改めるべきだ」と指摘。そのためには介護報酬の引き上げが必要だが、「それは高齢者優遇ではなく、賃金アップという現役への支援」と強調する。

 IT(情報技術)化や介護機器の導入などで、職員の負担軽減を図ることも課題だ。

 さらに、若者や高齢者など多様な人材の参入を促す必要がある。現在は、介護職員の8割を主婦パートなどの女性に頼っている。

新卒者に魅力アピール

 こうしたなか、新卒者の大量採用を始めた事業者もある。

 兵庫県宝塚市の特別養護老人ホーム「中山ちどり」。開業2年目で、関連施設も含めた職員220人のうち約80人が新卒で入った若者だ。

 前田優二施設長が開業前から大学や専門学校に足を運び、ゼミの時間を借りて学生に介護職の魅力をアピール。北海道や沖縄の就職説明会にも参加した。今年から、大学の福祉系学部や専門学校の学生を対象にインターンシップ(就業体験)も始める。「新卒者が魅力を感じ、働き続けてくれる職場でなければ、人材確保は難しい」と、前田施設長は話す。

 介護分野には、今後の経済と雇用を支える成長産業との期待がかかる。それにふさわしい環境作りが急がれる。(梅崎正直、高橋圭史)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いきいき快適生活の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事