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がん医療フォーラム2012

イベント・フォーラム

家族でみとる道しるべを(1)

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約500人が熱心に聴き入ったフォーラム

 がん患者支援の在り方を話し合う「がん医療フォーラム2012 地域で支える新しいがん医療のかたち」が11月11日、東京都千代田区の大手町サンケイプラザで開かれた。第1部では緩和ケアの現状や今後の課題が医師から報告され、第2部では地域で患者支援に取り組む団体代表らが具体的な活動を紹介した。

 共催 国立がん研究センター がん研究会 東京大学死生学・応用倫理センター
 後援 正力厚生会 厚生労働省 読売新聞社

第1部 講演

コーディネーター 読売新聞東京本社医療情報部長 南砂



地域の情報作りへ始動

 渡辺清高さん 国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報提供研究部室長

 1981年以降、がんは日本人の死因の第1位になりました。現在、年間35万人ががんで亡くなり、70万人が新たにがんと診断されています。2人に1人はがんになる時代、がんは誰にとっても身近な問題です。

 こうしたなか、「がん対策推進基本計画」には、信頼できる情報を作り、患者や家族に届けましょう、という目標が、国をあげた取り組みとして盛り込まれました。

 国立がん研究センターでは、全国397か所のがん診療連携拠点病院に冊子「がんになったら手にとるガイド」を提供し、がん情報をインターネット上で発信しています。不安や疑問にお答えし、情報を活用していただくために、拠点病院の相談支援センターと連携して取り組んでいます。

 地域で暮らす患者さんには、地元の医療や在宅の療養資源、患者会などの情報も入手できる仕組みが必要です。情報には、地域の社会や文化的背景、家族観も反映させるべきです。現在、各都道府県で地域の療養情報作成の取り組みが始まっています。

 

病院死8割 減らそう

 河原正典さん 爽秋会岡部医院医師

 世界保健機関が2002年に緩和ケアの定義を発表しました。注目すべきは、患者だけでなく家族の負担や不安にも目を向け、「スピリチュアル(霊的な)ケア」に触れたことです。「なぜ病気になったのか」という根源的な問いに耳を傾け、精神的な苦痛にも向き合うということです。

 在宅療養の中で、医療が支える部分はごくわずかです。生活を支えるケアマネジャーなどの役割の方がはるかに大きい。スピリチュアルケアでは、岡部医院ではチャプレン(病院付き牧師)も活動しています。

 本当は自宅で過ごしたいのに入院する人が多いのは、病院信仰、科学信仰があるからです。今は病院死が8割ですが、私たちや社会学者、宗教学者のアプローチなども使い、家に戻れる地域社会を作る必要があります。「医療の囲い込み」から解き放つべきです。

 みとりにはお子さんやお孫さんも、ぜひ参加させてほしいと思います。しゃべらなくなり、食べられなくなり、亡くなり、体が冷たくなる。その過程を実感できる数少ない機会です。

 

宗教性が大切

 岡部健さん 爽秋会岡部医院前理事長(9月死去)

岡部さんは、生前に録画したビデオで会場に語りかけた

 自宅でみとると、家族の4割くらいは「お迎えが来た」と言います。亡くなる前、いないはずの父親が枕元にいるのを見た、などと患者が語るのです。あの世とこの世がつながる感じです。この現象は研究論文にもしました。

 こうした「お迎え」は、20年前なら自然に受け止められる家族が多かったのですが、今の家族にはみとり体験がない。人が亡くなることが怖くて、在宅で診ていても最期は入院させることになります。本来は医療と関係ないところで膨大な医療資源が使われます。

 この状態を元通りに戻すには、やはり宗教性が大切です。亡くなる前、患者さん本人は結構楽になるのですが、家族にはみとるための道しるべがありません。このままで人の死を見守れるのでしょうか。現代は医療側が宗教を断ちきっていますが、壁を取り払って次の時代につなげてほしいのです。

 

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