前宮城県知事 浅野史郎(あさのしろう)さん 64
一病息災
[前宮城県知事 浅野史郎さん]成人T細胞白血病(4)夢は東京マラソン10キロ
2010年2月、骨髄移植後の体調も安定したため、国立がん研究センター中央病院を退院した。発症から8か月がたっていた。
「マラソンでいったら、いまは何キロ地点ですか?」
35キロ程度を予想していたが、担当医師の答えは「まだ10キロ地点ですね」。病気との長い闘いが、まだ続くことを改めて思い知った。検査のため、今も2週間に1度、通院している。
11年5月には慶応大に復職した。入院前「必ず大学に戻ってくるから」と学生たちと交わした約束を果たした。
今の夢は東京マラソンの移植者枠10キロを走ることだ。そのため、まずは散歩から始めた。だが、拒絶反応を抑える薬などの影響で足の筋肉は落ちたまま。階段の上り下りも難しい。
自らを「チャレンジド」(神から挑戦という使命を与えられた人の意)と呼ぶ。「何たって、成人T細胞白血病(ATL)を発症するのは、感染者のうちたった5%だけなのだから」。ATLの治療は日進月歩。10年前ならミニ移植ができず、助からなかった。
「還暦ATL患者の星」として、ATLの新しい治療法を受けた患者と連携しながら情報発信して、患者に勇気を与えるのが、治してもらった恩返しと考えている。(文・杉森純、写真・池谷美帆)
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