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最新医療~夕刊からだ面より

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乳がん 薬物治療…治療法 選択肢広がる

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 抗がん剤に加えて、乳がんのタイプによって分子標的薬やホルモン剤の適用を使い分ける治療が普及してきた。治療薬の選択肢も増えている。


 

がんのタイプごとに/副作用対策進む

 乳がんの薬物治療は大きく、〈1〉通常の抗がん剤〈2〉女性ホルモンの影響を抑えるホルモン療法〈3〉がん細胞の増殖を促す分子(たんぱく)を狙い撃ちする分子標的薬――の3種類がある。

 薬物治療の前にがん細胞を採取してその性質を調べることで、分子標的薬治療やホルモン療法の効果があるのか予測する検査が普及してきた。聖路加国際病院(東京都中央区)オンコロジーセンター長の山内照夫さん(48)は、「効果のある治療法を見定めるとともに、無用な薬物治療を避けることも、できるようになってきています」と言う。

 〈1〉がん細胞の表面に現れ増殖を促す「HER2(ハーツー)たんぱく」〈2〉女性ホルモンと結びついてがん細胞を増やす「ホルモン受容体」〈3〉がん細胞の増殖能力を示す「Ki67」の状況によって、五つのタイプに分類する。

 HER2たんぱくが陽性(+)なら、それを狙い撃ちする分子標的薬(抗HER2薬)の効果が期待できる。ホルモン受容体が陽性なら、女性ホルモンが結びつくのをブロックするなどしてがんの増殖を防ぐホルモン療法が有効だ。乳がんの7割は女性ホルモンの影響で増殖するタイプだ。

 どちらも陽性ならば、抗がん剤に加えて、分子標的薬とホルモン療法を併用する。どちらも陰性(-)なら、通常の抗がん剤を用いた治療を行う。ホルモン受容体が陽性でHER2が陰性の場合、Ki67値が高いタイプの方が抗がん剤が有効で、低いタイプの場合、抗がん剤の効果が高いものに比べると低くなる。

 HER2陽性の乳がんは治療が難しいとされたが、抗HER2薬の「トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)」「ラパチニブ(同タイケルブ)」の登場で治療効果が格段に改善した。さらに2種類が加わる見通しだ。

 手術前に薬物治療でがんを小さくすることで、乳房温存の可能性も広がる。Ki67が多く、がんの増殖力が高そうな場合は、手術に先立ち、抗がん剤治療を行うこともある。HER2陽性の場合、手術前に分子標的薬を使うこともできるようになった。

 ホルモン受容体陽性の乳がんでは、がん細胞の遺伝子を調べて再発リスクを予測する検査もある。再発リスクが高い場合、抗がん剤による治療が必要で、リスクの低い場合は無用な抗がん剤を避けられる。現在は保険のきかない検査だ。

 副作用対策も進んでいる。「吐き気止めは複数の改良薬が開発され、ほとんど恐れることはなくなった。分子標的薬は皮膚症状などが出ることが多いが、ステロイドや保湿剤などによる対処法が確立されつつある」と山内さんは言う。

 薬の選択肢が最も増えたのは、再発・転移に対する治療だ。血管新生を抑える分子標的薬「ベバシズマブ(同アバスチン)」も抗がん剤と併用される選択肢の一つとなっている。

 「再発後は副作用や病状を見ながら、患者が求める生活の維持を最優先に次の一手を考える。乳がんは使える薬が最も多く、再発後もできることがたくさんある。必要以上に恐れず、今ある時間を大切に過ごしてほしい」と話す。(岩永直子)

 

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