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高宮静男 西神戸医療センター精神・神経科部長(中)粘り強く寄り添う

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 西神戸医療センター(神戸市西区)の精神・神経科部長の高宮静男さんは、これまで小中学生を中心に200人以上の摂食障害の患者を診てきた。症状はさまざまで、治療法も一様ではない。「治るまでには時間がかかり、スタッフ全員でねばり強く患者に寄り添うことが重要だ」と話す。

「摂食障害を治療する上で、最も大切なのは患者との人間関係なんです」と話す西神戸医療センターの高宮静男さん(神戸市西区の同センターで)=笹井利恵子撮影

 

達成感から進む拒食症

 <低栄養状態が続けば、骨がもろくなったり、身長が伸びなくなったりするなど体への影響が出る。赤ちゃんのような行動が見られ、こだわりが強くなるなど、心への影響も懸念されることがある>

 体や心の状態を良くするには、栄養の回復が不可欠です。入院して自分の口で食べられない場合は、点滴などで栄養や水分をとります。栄養が十分でなければ、ベッドの上で、安静にしてもらい、栄養をとる必要性を実感してもらいます。

 「肥満気味だな」と学校の先生に言われたのをきっかけに、拒食症になった兵庫県内の小学5年の女の子は、プリンを一口食べられるようになるまで約1週間かかりました。

 栄養が回復するにつれ、心も落ち着きます。看護スタッフらの温かい見守りもあり、ある日、幼児みたいにわんわん泣き出しました。「泣いていいんよ。泣きたいだけ泣こうな」と言いながら、1時間以上手を握り続けました。女の子本人の心の叫びを出せたのが良かったのでしょう。約1か月後には、パンの絵などを交え、「自分の口で食べたい」などと、紙に自分の気持ちを書き込めるようになり、治療も進んでいきました。

 <摂食障害になるのは、まじめで、よい子が多いとされる>

 実は、そうした子どもは自分に自信がない子が多く、痩せてほめられることなどで自信が生まれます。でも、そこに落とし穴があるんです。何かのストレスや問題がきっかけで体重が減ったのに、「かわいくなった」と言われたり走るのが速くなったりしてほめられて、うれしくなります。手っ取り早いのは、食事を抜くことで、体重は落ち、達成感も得られる。痩せたことが、認められることにもつながり自信になる。そうした形で拒食症は進んでいくケースが多いんです。

人間関係しっかり結ぶ

 <センターでは小児科医や看護師、栄養士、臨床心理士らが頻繁に顔を合わせ、治療方針を話し合う>

 回復過程で髪の毛が抜ける可能性を説明するとショックを受ける子どももいます。ある女の子からは「先生の顔、二度と見たくない」と言われたこともありました。脱毛は、それまで足りなかった栄養分が供給され、良い髪の毛と生え替わるだけで、抜けるのは治りつつあることを証明していることなのですが、動揺は避けられません。

 でも、スタッフの力を借りて誠実に向き合う中で、私が本当のことを話していると相手が気づけば、信頼してくれるようになる。摂食障害の治療では、患者との人間関係をしっかり結び、「あなたのことを気にかけ、大事に思っているよ」というメッセージを送り続けることが大切なんです。(聞き手 平井宏一郎)

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