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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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誰に漢方薬を処方してもらえばよいのですか?

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 がん患者さんから、「主治医に漢方薬の相談をしたら、『自分は漢方医学を勉強したことがないので、処方できない』と言われ、断られた。」という話を聞きました。その方は、がん拠点病院で卵巣がんの手術を受けられた後、がん化学療法を始められたのですが、副作用のために体調を崩されたのだそうです。ご自分でいろいろと調べられたところ、漢方薬に副作用軽減効果があるということを見つけ、相談されたんだそうです。

 日本の伝統医学である漢方医学について、医師国家資格を持っているにも関わらず、医師が「勉強したことがない。」というのは、本当なのでしょうか?

 実は、事実なのです。一昔前の医学教育プログラムには、伝統医学を学ぶ機会がなかったんです。約150年前、日本は新しく生まれ変わりました。それまでの伝統的な政治体制からの脱却を目指した明治政府は近代国家として様々な制度改革を進めました。医療制度も整い、1961年には国民皆保険制度が実現し、日本国民ならば誰でも平等に医療が受けられるようになりました。

 制度改革と同じように医学教育も変わりました。明治政府はドイツ医学をお手本とし、第二次世界大戦後はアメリカ医学を導入してきました。江戸時代までの漢方医学は、すっかり忘れ去られた存在となってしまい、漢方医学を取り巻く環境も決して恵まれたものではありませんでした。

 しかし、明治維新以来、先人達の多くの努力により、日本伝統医学は守られ受け継がれてきました。その努力が実を結び、1967年、保険で漢方薬が処方されるようになり、2004年、日本全国にある医学部80施設すべてで漢方医学の教育が行われるようになりました。

 そして、今年、がん医療においても漢方医学の新しい風が吹きました。第3次対がん総合戦略研究事業の一環として、日本全国のがん拠点病院の医師を対象とした「漢方キャラバンセミナー」が札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5大都市で開催されました。

 このセミナーの目的は、がん医療にたずさわる医師に漢方医学を学んでもらうことで、安全に安心してがん患者さんへ漢方薬を活用してもらうことでした。

 7月から始まったセミナーには、約300人の医師が参加されました。ぼくも講師としてすべてのセミナーに参加させていただきましたが、参加された医師の皆さんからは、がん医療で苦しんでいる人を少しでも救うことが出来ればという強い思いがヒシヒシと伝わってきました。

 がん拠点病院の医師から漢方薬が処方されるようになる日も遠くないかもしれません。そして、漢方の輪がもっと多くの医療機関に広がっていくことを、心から願っています。


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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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