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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

高齢者のうつ病

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 高齢者は、生きがいを感じる仕事がなくなったり、自分の老いに対して不安になったりした時、あるいは配偶者や親しい友人が亡くなったりした時には、いわゆる“うつ”状態になりがちです。

 そのようなことがあると、中年でも同じように気分が滅入ってしまいますが、老人の場合はその状態が長くつづき、もとのような気持ちをとり戻すには何日も、何週間もかかることが多いようです。

 しかし、それは本当のうつ病ではないことが多いのです。気持ちが落ち込んでいるように見えるので、周囲の人が元気づけたり、気分転換のためにと旅行などに誘ったりしても、なかなか気分はよくならず、それが何週間もつづいたりするので、つい本当のうつ病と思ってしまいます。こんな時は、うつ病か、いわゆる“うつ”状態が続いているのか、はっきり診断できる精神科医や心療内科医にかからないと、当人の苦しみは増すばかりです。

 私は長年『明日の友』(婦人之友社刊)という雑誌の編集顧問を務めてきましたが、そこに掲載された精神科医の梶村尚史医師のチェックリストは、一般の方にもとてもわかりやすいので紹介しましょう。



■うつ病の症状
・憂うつ気分
・無気力
・自分を責める
・希死念慮(自殺念慮)
・イライラ、焦燥感
・不眠
・食欲低下
・性欲低下
・身体の不調
・朝症状がひどく、夕方にはある程度回復する
・自身喪失
・無価値感

■中高年に特有の症状
・不安、焦燥が強い
・身体的な訴えが多くなる
・心気症状 小さな体の変化を気にしたり、重大な病気ではないかと不安になる
・被害妄想
・罪業妄想 今の自分の状態が過去の罪のために起きていると思いこむ
・貧困妄想 異常な経済的不安を感じる
・一見認知症のような記憶障害が出てくる(おおよそ65歳以上)



 中高年の人がうつ病にかかるいちばん多い誘因は喪失体験で、身内や親しい友人との死別、あるいは退職、からだの健康障害などです。これらの中でも身体の不調やがんが発見されたりすると、滅入ってうつ病を発症することが多いのです。

 うつ病の診察では、臨床経験の豊富な精神科医あるいは心療内科医が、少なくとも1時間はかけてやわらかい言葉で語りかけることが大切であることを指摘しておきます。

 薬物療法や運動療法でふさぎこんだ患者の心が少しでも明るくなれば、周りの人はこれまでの趣味や関心事に気持ちを向けるようにしむけるなど、暖かく接するように努めてほしいと思います。


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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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