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女性店員 独特の高い声

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 「いらっしゃいませ~っ」。東京のショッピング街を歩いていたら、アニメの少女キャラクターのような、少し鼻にかかった高い声の女性店員の呼びかけが耳に飛び込んできた。気になって耳を澄ますと、あちこちから響いてくる。この独特な声は、販売現場で広がっているのだろうか。

騒音に埋もれず活気演出

「ソ」の音を意識して語尾を上げるように「いらっしゃいませ~」(東京・豊洲の「アクシーズファム」で)

 東京都内の若者が集まる商業施設のいくつかに出かけてみた。衣料品店や雑貨店を中心に、女性店員の多くが、同じようなかわいい声で客に呼びかけている。少し舌足らずで、「…ませ~っ」「…くださ~い」などと、言葉の最後を少し強調するのも特徴だ。店頭だけでなく、館内放送やイベント会場などでも耳にした。

 そこで、東京都江東区の商業施設「ららぽーと豊洲」で、店員がひときわ響く声を出していた婦人服店「アクシーズファム」に取材を申し込んだ。

 同店の運営会社の接客トレーナー山ノ井洋子さんは「アニメのような声を出すよう指導しているわけではありませんが……」と苦笑しつつも「お客様に一人でも多く入店してもらうため、販売員にはよく届き、高くて明るい声を出すよう指導しています」と説明する。女性らしい雰囲気の服のイメージにも合い、店の活気も演出できるという。

 アルバイトも含め社員全員に研修を行い、通常の話し声では接客しないよう指導している。マニュアルもある。通常の話し声が「ド」や「レ」の音階だとしたら、「ソ」の音を意識して発声するのがポイント。「単に声を張り上げるのではなく、通常よりも高めの声で。それから語尾を上げること」と山ノ井さん。かわいい声で、いかに遠くまで届く声を出すかが大切なのだという。

 アニメのような声を意図してはいないというものの、店員たちのかわいい声は、アニメキャラを思い浮かばせる声質だ。

 専門家に、こうした若い店員たちの声の特徴を聞いてみた。甲南大教授(音声科学)の北村達也さんは、かつてお笑いタレントの柳原可奈子さんが、高くてかわいい声でショップ店員を演じる際の音声分析をしたことがある。「ソプラノ歌手やサイレンなどと同様に、響きがよく保たれていた。ザワザワとした雑踏の中でも、騒音に埋もれず人の耳に届きやすい」という。人が集まる商業施設で、店員がこうした声を出しているのは理由がある、という訳だ。

 電通若者研究部研究員の吉田将英さんは、「この1~2年で、声を個性と捉えるトレンドが出てきた。店員がアニメキャラのような声を使っても、かわいいよね、と好感を持って受け入れられるようになり、広がってきたのでは」という。

 ただ、アニメキャラのような声は、喉に力を入れ声帯をギュッと締めて発声するため、喉への負担が大きいという。東京医大教授(耳鼻咽喉科)で新宿ボイスクリニック院長の渡嘉敷亮二さんのもとにはこの2年、アニメキャラのような声を出したことが原因で喉を痛めて来院する女性が、後を絶たないという。「無理をしないことが大切です」と話している。

トレーニングも盛ん

薬局スタッフに発声指導する秋竹さん(中央)。声を遠くに向かって出すトレーニングだ(東京・品川で)

 目線や身ぶり手ぶりなどと並び、声がもたらすイメージは、会話の重要な要素だという。アニメのキャラクターのような明るく高い声で接客する店員がいる一方、スポーツやビジネスの場で活躍する女性には、低い声で話す人も少なくない。会話分析をしている武蔵野大教授(異文化コミュニケーション論)の佐々木瑞枝さんは、「場面によって女性は声を使い分けている」と分析する。

 佐々木さんは、企業の会議の音声を録音し会話分析することがある。「働く女性が増えた1990年代以降、会議では低い声で話す女性が増えた」という。特に意見を発表する場面などでは、声が低くなる傾向があった。

 一方で、教授にリポートの締め切り延期を求める女子学生などは、高くてかわいい声を駆使しているそうだ。「聞いてほしい、買ってほしいなど頼み事をする時に、こうした声が使われるのでは」

 声の高低だけでなく、声の明るさや滑舌などを変えることでイメージを良くしようと、販売や営業など対人ビジネスの現場では「ボイストレーニング」が盛んに行われている。

 「声はトレーニングすることで、必ず変わります」。11月下旬、東京・品川のホテルの一室に、薬局運営の「タカラメディカ」(東京)社員約70人が集まり、「声のマナー」講座を受けていた。

 講師は声の個人指導や企業研修などを手がけるボイストレーナーの秋竹朋子さん。もともとは声楽家だったが、話し方を指導するうちに、下着メーカーや生命保険会社など、各種企業から依頼が相次ぐようになった。

 タカラメディカの講座では、受講者のほとんどが薬局で患者に接する薬剤師の女性。薬局では暗過ぎず明る過ぎず、また薬の名称を本人にはっきりと伝えられる声が必要だという。秋竹さんの指導でストレッチ体操や腹式呼吸法を練習し、舌をほぐし声帯の筋トレをしながら、発声の基礎を学んだ。さらに滑舌のポイントやアクセントのコツなど、約80分間の講座を終えると、じっとりと汗をかくほど。まさにトレーニングだ。

 ちなみに記者(42)は、ささやくような低い声が持ち味。「声帯を使わない、楽なしゃべり方ですね。40歳を過ぎたら意識して鍛えないと、どんどん声が衰えて、イメージが悪くなってしまいますよ」と秋竹さん。

 声のアンチエイジングのためには、腹式呼吸で話す習慣を身につけること。「たるんだおなかも鍛えられ、一石二鳥です」とアドバイスされてしまった。(月野美帆子)

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