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医療部発

コラム

本「がんワクチン治療革命」

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 ヒトゲノム解析の第一人者で、がんペプチドワクチンの開発に取り組むシカゴ大学医学部教授の中村祐輔さんが「がんワクチン治療革命」(講談社、税別1400円)を執筆しました。がんペプチドワクチン療法とは、簡単に言えば、免疫力を高めてがん細胞をやっつける、免疫療法の一つです。外科療法(手術)、放射線療法、科学療法(抗がん剤治療)の「がん3大療法」に次ぐ4番目の治療法として期待されているとされ、様々なメディアで中村さんの活躍は紹介されています。本書では免疫療法の現状を易しく解説しています。

 本書の中で、私が個人的に興味を持ったのは、第5章「がん医療の近未来 この国の『政・官・医』という病」です。日本の厚生労働省にあたる米国の食品医薬品局(FDA)が、この10年間、分子標的薬という新しいタイプの薬を20数種類認めましたが、すべて欧米の企業が開発したもので、日本製は一つもないそうです。日本人が使っている心臓ペースメーカーはすべて外国製です。

 日本が外国製の薬・医療機器による「医療植民地」になってしまうのではないか・・・。そんな懸念を持っていた中村さんは、政府から、「新設する医療イノベーション推進室の室長に就任してほしい」との打診があり、引き受けました。文部科学省・厚生労働省・経済産業省・総務省が連携し、オールジャパンで日本初の薬・医療機器・再生医療製品などを生み出そうというのが推進室設立の目的です。

 しかし、省庁の縦割りは相変わらず。優秀な役人がいっぱいなのに国家戦略が立てられないというのです。推進室には予算も権限もなく、自分の無力さを感じたと言います。そして、室長の職を辞任。それだけでなく、日本を離れ、アメリカの大学医学部教授になりました。

 中村さんの苦難の体験は日本の医療の問題点をあぶり出していると言えます。優秀な人材の海外流出は、中村さんのケースで終わりにしてほしいものです。


◇◇◇ご購入はこちら◇◇◇

 

坂上博 1998年1月から医療情報部。主な取材対象は、心臓病、肺がん、臓器移植、高齢者と薬の付き合い方など。趣味は、朝鮮半島情勢の観察、韓国語の習得。


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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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2件 のコメント

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海外では逆に思っている人もいますね

日本への憧れ

やはり研究している人にとっては資金や環境の提供は必要だという事ですね。多民族で構成されている場所へと人は流れていくのでしょうか。単民族でああだこ...

やはり研究している人にとっては資金や環境の提供は必要だという事ですね。

多民族で構成されている場所へと人は流れていくのでしょうか。
単民族でああだこうだと小さい面積の中で言っていてもしょうがないとは思います。

たとえどんないい意見も、それだけです。
読んだら終わり!次はいつだろう。
ネットならではの楽しみと化してしまいます。

でも世界に出て行って成果を実現するという事はもう止められない事実だと思います。

逆も真なりで言えば、日本は素材立国。
それを求めて各国から来日されていると思います。報道されていない小さな事ですけど、そういう情報もあります。
そうなると、人材を国外へだしていたからこそ実現できているのではないかと。

嘆く一方の情報が多いし昨今ですけど、捨てたものでは日本ありです。
スポーツ選手や監督やコーチなども、日本への思いがある人がいます。
サッカーのプロの練習を見ていたらスカウトかと思い違いされた事ありますし。

東洋人で日本人ではと結構みられているんだという経験から、そう思うこのごろです。
日本人ひとりだけ。
スタジアムで見学って、ピッチにいる選手などからは、そうとう目立つのでしょうかね。

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優秀さの質と未来適応性

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

日本の社会文化は、現行の送りバントしか許さない傾向があります。 全く違う概念はおそらく「欧米からもたらされる」という形式を経ないと難しいのではな...

日本の社会文化は、現行の送りバントしか許さない傾向があります。



全く違う概念はおそらく「欧米からもたらされる」という形式を経ないと難しいのではないでしょうか?

(あるいは、恐ろしい自己完結能力を持った人間が苦難に打ち勝って成し遂げるか。)



個人的にはサポートをがついて業績をシェアする形であれば、色々アイデアは出せますが、問題はそれを日本の社会的状態が許すか、と言えば「ノー」でしょう。

だからこそ、とても社会的地位の高い人でさえアメリカに行ったのではないかと推測します。

(僕も自分が明らかにタッチできない分野のアイデアだけ表に出すようにしています)



革命は辺境から起こる。



って、どっかで耳にした言葉ですが、案外素人や若手の発想の方が本質的だったりするものです。

しかし、実行ノウハウ。

とりわけ、英語に翻訳しての特許出願やらなんやらだとものすごいハードルが上がります。

そういう意味では既得権益の方々にもご協力願わないと困ると思います。



そして、既得権益の方々も、そういう風に舵を切らないとよその国に既得権益ごと吹き飛ばされるのではないか・・・と思うのですけどね。



日本では野心的な医療法人のベンチャー部門がそういったものに向いてるのかもしれないですね。

求められる能力の質の違いで難しいのでしょう。

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