前宮城県知事 浅野史郎(あさのしろう)さん 64
メディアなどでお馴染みの芸能人、有名人だって、一人の人間として病気や心身の不調と向き合っています。苦しかった経験や、病によって気付かされたことなど、率直な思いをお聞きします。
一病息災
[前宮城県知事 浅野史郎さん]成人T細胞白血病(1)充実の日々 突然の告知
改革派知事として、宮城県知事を12年間務めた。退任後は、慶応大教授に転身、地方自治の講義をしたり、障害福祉について学生たちと議論したりするほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍。充実した日々を過ごしていた。
2009年の5月25日、検査に訪れた東北大病院で成人T細胞白血病(ATL)の発症を告げられた。「まさか、自分が発症するなんて」。2か月前には、東京マラソンを4時間15分で完走したばかりで健康には自信があった。
ATLは、HTLV1というウイルスが白血球の中のT細胞をがん化して発症する。HTLV1は、主に母乳を介して感染する。
HTLV1の感染自体は05年の献血時に知らされていた。だが、潜伏期間は50~60年と長く、感染者のうち生涯に発症するのは5%に過ぎない。
ATLは白血病の中でも、最も治療が難しい病気だ。告げられて1時間ほど目の前が真っ暗になり、頭がクラクラした。
「ごめんね」。発症を知った母親から連絡があった。ATLが初めて報告されたのは1977年のことだ。母親は授乳で感染するなど知りようもなかった。
病院からの帰り、妻の光子さんにこう話した。
「この病気と闘う。絶対に負けない。どうか力を貸してほしい」。ATLとの闘いが始まった。
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