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最新医療~夕刊からだ面より

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薬物依存症…「考え方」の修正、断薬促す

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 覚醒剤や脱法ドラッグなどを繰り返し使用する薬物依存症患者の治療で、認知行動療法が注目されている。依存に陥る心理や背景を読み解き、思考や行動のパターンを変えて断薬につなげるというものだ。

認知行動療法通院で

 抗不安薬や睡眠薬の不適切な長期処方による薬物依存の場合は、患者自身は気づかないうちに依存状態になっているケースが主だ。

 これに対し、違法薬物による依存は、患者は大きなストレスや複雑な背景を抱えていることが多い。覚醒剤やヘロインなどに加え、最近では、成分の化学構造をわずかに変えるなどして法の網をすり抜けた有害薬物である「脱法ドラッグ」も社会問題化している。

 埼玉県立精神医療センター(伊奈町)副病院長、成瀬暢也(のぶや)さんは、現実逃避から薬を使用する患者の共通の特徴として、「自己評価が低く自信がない」「本音が言えない」「人を信じられない」「見捨てられる不安が強い」などを挙げる。

 認知行動療法では、このような患者の考え方の特徴を修正し、薬物に頼らない生き方を目指す。患者は依存性薬物の影響が脳に及び、意志だけでは使用をやめられないが、考え方や人間関係などを見直すことで依存に歯止めをかける。

 米国で始まり、この5年で日本でも少しずつ広まってきた。同センターは2008年に導入した。

 警察に通報しないことをまず伝え、患者との信頼関係づくりに努める。同時に、断薬で表れる強い不安や焦燥感などを抑えるため、薬物治療を行う。状態が安定したところで、認知行動療法を始める。

 同センターは週1回の通院による、計36回(9か月間)の再発予防プログラムを行っている。臨床心理士らが進行役になり、毎回5~10人ほどが参加する。

 初回は、毎日の時間ごとの生活スケジュール作成を学び、薬物のことを思い出す「空白の時間」を作らないようにする。それでも「これで最後」と再び手が出やすいが、欲求が生じた時には病院に電話したり家族に話したりするなど、歯止めになる方法を学ぶ。

 また、薬物使用の誘いがあった時の断り方や、怒りなどの感情のコントロール法、困難に直面した時の対処法などの実践的な対策を、ほかの参加者やスタッフと一緒に考えていく。

 成瀬さんは「依存症患者は、何でも話せる仲間を持った経験が少ない。通院治療を、そうした経験の場にしたい」と話す。脱法ドラッグによる依存症治療のため参加している30歳代の男性は「ほかの参加者の話を聞くうちに、家族をどれだけ心配させていたか、わかった。大切な家族をもう裏切らない」と話す。

 同センターでは、治療を終えた患者の6割が3か月以上の断薬に成功している。

 期間や内容はやや異なるが、国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)、神奈川県立精神医療センターせりがや病院(横浜市港南区)、肥前精神医療センター(佐賀県吉野ヶ里町)などでも、同様の治療に取り組んでいる。(佐藤光展)

認知行動療法

 医師や心理士によるカウンセリングを通じ、患者がストレスを過剰にため込まないように、考え方や行動の癖を修正する心理療法。うつ病や不安障害の治療として主に行われている。


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