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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

肺炎 高齢者の予防の注意点

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 2011年の日本人の死亡疾患の統計をみると、第1位ががん、第2位が心臓病、第3位が肺炎となっている。肺炎が死因の上位にくることは、一般の人には知られていないように思われる。

 がん、心臓病、脳卒中などを除いて、高齢者、特に介護を受けている人の最後は、もともとの疾患でなく、食べ物や唾液が誤って気管に入るなどして起こる誤嚥性肺炎が原因というケースが目立って多いのである。

 しかし食べ物の飲み込み方を介護している人が心得ていれば、誤嚥による肺炎のために急死することは避けられるということをここで強調しようと思う。

 介護される人は仰向けに寝ながら食物を口から入れてもらったり、または30%位の半臥位で、食物を飲み込むことが多い。この姿勢は誤嚥を起こしやすいので、これを避けるためには、できれば直角の座位をとらせ、食べ物を口に入れたら、少し前屈みの姿勢をとらせて、よく噛んだ後に、「ゴクン」と飲みなさいと指導することが大切である。

口を清潔に保つことが大切

 さて、誤嚥でなくても、いろいろの菌に感染して口内に歯周病があるような状態で食物を飲み込むと、細菌が気道に入って、それが原因で肺炎を引き起こすことがある。

 それ故、高齢者で療養中の人は、1日2~3回は、口の中をうすい食塩水でよく洗うこと、つまり口腔感染源となるいろいろの細菌を洗い流しておくことが大切である。一般には食後に歯ブラシで歯を磨くことは、歯自体のための健康法と思っている人が多いが、それは口腔内細菌を洗い流すことと、細菌性の歯周病を予防するために必要なのである。

 健康者の口腔内には通常、「善玉」とも呼ばれる嫌気性菌が存在し、病原性細菌の繁殖を抑制している。しかし加齢による唾液分泌量の低下、日常生活動作の低下、意識障害、心不全、糖尿病、抗生物質使用、などにより口腔内で病原性細菌が繁殖することがある。

 一般に世の中で多い「市中」肺炎では、肺炎球菌、インフルエンザ菌などが主な起点菌となるのであるが、高齢者肺炎は、「病院内感染性」肺炎の形が多いのである。つまり、緑膿菌などを含むグラム陰性桿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などが原因となる治りにくい肺炎を起こしてしまうのである。

 以上のように、老人では、誤嚥性肺炎が度重なることに加え、病原性の強い細菌を唾液として飲み込むことによっても肺炎が発生するのである。さらに、寝たきり老人は、一般に免疫機能が低下しているため、肺炎菌に対しての抵抗力も下がっているのである。


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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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