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認定こども園、普及進まず…横浜
横浜市内で40歳代までの人口が多く、待機児童問題が特に深刻化している港北区。夫婦共働きで、自身は都内の銀行に勤務し、4歳の長女と2歳の次女を育てている母親(38)は2人を保育所に預けている。しかし、週2回は、保育所がまだ開いていない早朝に出勤するため、NPO法人の有料サービスを利用して娘2人を保育所に送り届けてもらう。
横浜市の働く親には、このように緊急時に預かってもらったり、送迎してもらったりするサービスに頼らざるを得ないケースが増えている。診療所などが病気の子供を預かる病児保育を行う施設は、横浜市に15か所ある。だが、かかりつけ医に診察してもらい、施設の空き状況を確認する必要があり、「使い勝手が悪い」との意見が多い。
横浜市は認可保育所の増設に取り組み、港北区ではこの3年で9か所増えたが、緊急時のサービスはまだ十分でない。保育所に定期的に通っていない子供を預かる一時保育を行っている同区内の認可保育所の一つでは、申し込みの受け付け開始後、電話が相次ぎ、月に延べ20人の定員がすぐに埋まってしまう。
港北区の地域子育て支援拠点「どろっぷ」の原美紀施設長は「子育ての予算は子ども手当や児童手当のように家庭に配るのではなく、保育拠点の整備に使うべきだ」と指摘している。
民主党が今回の衆院選のために作成したマニフェスト(政権公約)の冊子をめくると、「社会保障」のページに園児に囲まれ、給食を楽しむ野田首相の写真が目に留まる。首相が昨年10月、横浜市青葉区の幼保一体型施設「認定こども園」を視察した一シーンだ。
認定こども園は、幼稚園も乳児も加えた長時間保育を担うことが期待されている。社会保障・税一体改革で成立した子育て関連新法では待機児童解消の「切り札」として、普及・充実を図る方針が盛り込まれた。
ただ、乳児保育には手厚い職員配置などが必要で、幼稚園の負担が大きく、幼稚園の定員充足率が高い都市部で認定こども園の設置が進むかは不透明だ。
実際、横浜市では認可保育所507か所、幼稚園286か所に対し、認定こども園は12か所にとどまる。
私立幼稚園が加盟する横浜市幼稚園協会でも、移行をためらう園が大半で、保護者の制度の理解も進んでいないのが実情だという。同協会の木元茂会長は「幼稚園の定員割れが起きている地方と、横浜では事情が違う。現場は混乱しており、このままでは認定こども園の普及は進まない」と話す。
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