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(1)講演 運動、勉強に支障

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 子どもの肥満をテーマにした「医療ルネサンス青森フォーラム」が10月19日、青森市柳川の青森市民ホールで開かれた。独協医科大小児科教授の有阪治さんが「子どもの肥満を防ぐには―基礎知識と最新情報」と題して基調講演。続いて、青森県立保健大健康科学部教授の中村由美子さんと対談し、食事や運動など生活習慣を見直す方法について意見を交わした。(コーディネーター 読売新聞東京本社医療情報部長・南砂)

 主催=読売新聞社
 後援=青森県、青森県医師会

独協医科大学小児科教授 有阪 治(ありさか・おさむ)さん
 1977年順天堂大医学部卒業後、同大助教授などを経て98年から現職。子どもの肥満予防を目的に、出生時からの追跡調査を行っている。

独協医科大学小児科教授 有阪治さん

 日本では30年前より小児肥満が約3倍増えたと言われています。寝て座って生活し、カロリーが高く脂肪や糖質の多いものを食べたり、夜型の生活を送ったりと、悪い生活習慣の積み重ねで起こるのが肥満です。

 子どもの肥満はなぜいけないか。まず体脂肪量が増えて運動能力が低下し、骨折や関節障害を起こすこともある。外見をからかわれ、コンプレックスが不登校の問題にもつながります。肥満が進んで喉周りに脂肪がたまれば、睡眠時無呼吸症候群になります。夜に深い眠りにつけずに昼間に眠くなり、勉強に集中できなくなるなど、様々な障害が起きるのです。

 次の段階は、内臓脂肪がたまり、膵臓(すいぞう)から分泌されて血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が高まります。進行するとメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)となり、生活習慣が原因の「2型糖尿病」になりやすくなり、動脈硬化を早めます。40、50歳代で心筋梗塞など心血管系疾患による死亡の原因につながります。

 中学生、高校生の肥満は大体、そのまま大人の肥満に移行します。小児期に肥満だと、成人してからも心血管系疾患の発症リスクが高まります。子どもの時から肥満のない人の危険比率を1とした場合、思春期から大人までずっと肥満状態の人は、心筋梗塞になるリスクが9倍という外国のデータがあります。子どもの肥満は大人になる前に治す必要があるわけです。

 では、子どもの肥満はいつから始まるのでしょうか。連続的に見た調査では、中学1年の肥満の子は小学校に入る前から肥満度が増えていく傾向がありました。肥満児を増やさないためには、就学前の段階で、体重が増加傾向にある子に注意して生活改善を求めなければなりません。

 そのためには、肥満が始まる時期を早くキャッチすることが重要です。肥満の指標であるBMIは、生後1歳前くらいまで上がっていき、よちよち歩きが始まると脂肪が減ってスリムになるため、一度下がる。そして、6歳前後で再び上がるリバウンド現象が起こる。これを「アディポシティー・リバウンド」と呼びます。

 このリバウンドが早く始まる人は、将来の肥満につながりやすい。3歳健診でのBMIが1歳半の時より上がっていると、将来要注意です。10年後には、中性脂肪や血圧が高い状態になる可能性が高いのです。

 肥満が始まったら、初期の段階で努力しないと、高度肥満になってからでは大変な時間と労力が必要になります。大切なのは、家庭の生活習慣を点検すること。朝食を食べないことや睡眠不足が、肥満につながります。生活のリズムを作り、運動し、バランスの良い食事を取ることが大切です。

BMI(Body Mass Index)

 肥満の程度を知る目安となる「体格指数」。体重(キロ・グラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で計算する。


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