文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

実家をたたむ(中)買い手つくよう私物整理

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
空き家となった実家から東京の自宅に運んできた仏壇。「実家は売る予定ですが、これで親の気持ちの一部は引き継げたと思っています」(東京都内で)

 空き家となった実家を手放すことに決めても、遺品や思い出の品の処分に苦労することが多い。

 東京都東久留米市に住む教員の男性(62)は父母を相次いで亡くし、空き家となった京都市内の実家を昨年相続。売却を予定しているが、遺品の整理に頭を悩ませている。大学教授だった父が残したのは大量の本。「廊下や階段にもぎっしりと本が積まれていました」。他にも多くの日用品が生前のまま残され、夏休みに1週間ほどかけて整理したが、片付けきれていない。

 仏壇の処分も困った。東京の自宅への運搬を宅配業者に依頼したところ、運び出す前日になって「魂を抜きましたか」と業者から聞かれて驚いた。急いで地元の寺に行って事情を話し、無事に運べたが、「片付けがこんなに大変だとは思いませんでした」と話す。

 三重県桑名市に住む自営業の男性(59)は、空き家になった愛知県の実家にあった仏壇が大きすぎて自宅に入らず、位牌(いはい)だけを移した。仏壇は業者に頼んで処分してもらったという。「ようやく片付き、この夏、不動産屋に売却を依頼することができました」と胸をなで下ろす。

 国土交通省が東京都と近隣の県、大阪府で行った「空家実態調査」(2009年度)によると、空き家となった持ち家の半数が、5年以上住人がおらず、「腐朽、破損あり」の状態だった。住人不在の家は維持管理が行き届かず傷みが進むので、片付けは早いにこしたことがない。

 中部地方の農山村の中古住宅を専門に扱う不動産会社「奥三河カントリー」(愛知県犬山市)の塚水雄一朗さんも「売却や賃貸するつもりなら、できるだけ早く私物を片付けておいた方がいい」と話す。交通が不便な地域にある古い家でも、片付いていて手入れがされていれば、田舎暮らしを希望する人々の目に留まることがあるという。「『買ってくれる人がいたら片付ける』と放置している人が多いが、私物が散乱したままの家に買い手はつきません」

登記簿確認 相続円滑に

 さらに、空き家になった実家を円滑に処分するためには、実家の登記を法務局などで調べておくことも大切になる。島根県の実家を売却した東京都の自営業の男性(53)は、売る前に実家の登記を調べたところ、50年以上前に取り壊した祖父名義の家が記されていたことに驚いた。「売ろうとした実家は登記されていなかったんです」。そのことがわかったのが、父親の生前だったため、スムーズに登記手続きができて売れたが、「放っておいたら面倒なことになるところでした」。

 土地や建物はきちんと登記されていないと、売却を円滑に進めることが難しくなる。例えば、祖父から父への相続手続きが行われないまま、父が亡くなった場合、その子どもはおじやおば、場合によってその子孫にも合意を得ないと相続することができない。地方の家の相続問題を専門に扱う司法書士の辻村潤さんによると、親戚から合意を得るために多くの時間や旅費などをかけることになり、実家を売ることを諦めて放置してしまうケースも多い。

 辻村さんは「できれば、親の生前に実家の土地や建物の状況を調べ、大切にしている物や仏壇などと合わせて、どうしたいかを話し合ってください。専門家の意見を聞きながら親の意思を遺言書にしておけば、トラブルを避けやすくなります」とアドバイスしている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事