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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

不明熱 原因のわからない体温上昇

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 「不明熱」という医学用語についてこの欄で説明しようと思う。

 不明熱というと原因が不明な体温上昇という意味になる。医学校を卒業して1年も経っていない研修医にとっては不明熱と言える症例でも、ベテランの経験豊かな医師は発熱の原因をズバリと診断するかもしれず、不明熱と思う例は経験によって少なくなっていくと言えよう。

 ところで「熱」とは何かというと、体温上昇のことだ。最近の体温計は30秒以内に数字がでるし、外国旅行から帰国して入国する際には赤外線サーモグラフィで体温が上っていることがすぐ分かる。

 医学書によると、普通の人は体温が摂氏37℃以上で発熱とし、37.0~37.3℃を微熱、37.5℃以上を軽熱、38℃以上を高熱としている。

 ところが体温は年齢によって違い、生まれたばかりの新生児は37.2℃~37.4℃は平熱である。80歳以上の老人になると早朝起きた時の体温は35℃~35.9℃、すなわち35度台であることが多いので、それが36.5℃になれば発熱と考えるべきである。

不明熱の原因

 米国の感染症のある研究者(P.H.Kazanjian)によれば、不明熱の原因としては、感染40%、悪性腫瘍20%、膠原病15%、その他15%、原因不明10%と発表されている。

 私の考えでは感染症、悪性腫瘍、膠原病の外に、微熱の原因として甲状腺機能亢進症や鉄不足性貧血もある。これらは私の70年以上の臨床経験からわかるものである。やはり、臨床の現場では、医師の鑑別能力が重要と言いたい。

発熱の大半は「風邪」

 さて発熱を原因として一般外来に来診する症例の中で一番多いのは上気道感染、いわゆる風邪で、鼻水、咳(せき)、咽頭痛があれば、発熱の原因はそこに絞ることができる。大半はウィルスが原因である。細菌が関与することは稀で(例外として小児の中耳炎、扁桃腺炎、細菌性副鼻腔炎)、仮に細菌性であったとしても、自然に改善することもある。真菌性のものは特殊な喀痰テストをしないと分らない。

 気道の中の下気道炎もあり得るが、成人の場合は気管支炎なら多くは問題なく、聴診所見と呼吸数、呼吸パターンから肺炎を考えて胸部X線撮影をすべきかどうかを決めるのが外来での医師の仕事である。肺炎を疑う場合、

 (1)発熱が37.8℃以下
 (2)脈拍が100/分以下
 (3)肺の正常聴心音
 (4)喘息がない

 ―― という4つを満たしておれば、胸部X線撮影にまでもって行かなくても肺炎ではないと判断してよい場合が多い。

 発熱した患者に医師はよく抗菌薬を処方するが、抗菌薬を使う前に、必ず分泌物を綿棒でとって細菌培養をするべきだ。この場合、細菌類の種類を調べるグラム染色を行った上で抗生剤の種類をきめるのが主治医の義務であることを最後に述べたい。


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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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