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カルテの余白に

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藤澤浩美 兵庫医大病院がんセンター薬剤師(中)強い薬 調剤に緊張感

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 兵庫医大病院(兵庫県西宮市)がんセンター専任薬剤師の藤澤浩美さん(48)は、がん医療チームの一員として、抗がん剤の調剤や、患者への薬の効果や副作用の説明などを受け持つ。患者や家族から学ぶことも多いという。

抗がん剤の調剤をする藤沢さん(11月5日、兵庫県西宮市の兵庫医大病院で)=永尾泰史撮影

 

ペアで分量を確認

 <青い防護服に身を包み、安全キャビネットに手を差し入れ、注射器などを用いて抗がん剤を調剤する>

 薬の種類によっては作用が極めて強く、調剤する薬剤師が誤って触れると危険ですので慎重に作業します。

 そのように強い薬ですので、分量を誤ると、患者さんに重大な健康被害が生じる危険性があります。一人で調剤をするとミスをしやすいので、必ず別の薬剤師とペアで、処方箋に書かれた分量を確認します。

 普通の薬の調剤でも緊張感が必要ですが、抗がん剤ではより一層の緊張感が求められます。

 研修に来た薬学部生が緊張で手を震わせながら抗がん剤を調剤している姿を見かけますが、心構えとして正しいと言えます。

専門職集まり議論

 <チーム医療で、薬剤師の責任の重さを感じる>

 医師の考えに沿って進みがちだった従来の医療に対し、看護師や薬剤師ら専門職が対等な立場で意見を述べ合う「チーム医療」が広がっており、私の勤務先でも取り入れています。私もチームの一員です。

 最近、大腸がんで抗がん剤治療を受けている女性が食欲不振に悩んでいるという報告が看護師からあり、チームで検討しました。その抗がん剤の副作用として知られる「低マグネシウム血症」の症状ではないかと考え、医師に調べてもらうと、やはりそうでした。点滴によるマグネシウムの補充で改善しました。

 このように、それぞれの専門職が集まって個々の患者さんについて議論することで、よりよい結果が生まれます。チーム医療で薬の専門家として果たすべき責任の重さを感じる毎日です。

立派な有り様を学ぶ

 <患者や家族から、人への思いやりを学ぶ>

 患者さんに全力で向き合っても、残念ながら思わしくない結果になることもあります。でも、前向きな姿勢や思いやりを失わない方々が多くいらっしゃいます。

 末期がんの高齢男性は、食べるのもつらいほど弱っておられたのですが、奥様が作る食事に「おいしいね」と口を付けていました。

 お一人の時、無理して食べる理由を尋ねると「若い頃迷惑をかけたので、恩返しのつもりだよ」と見せられた笑顔が印象に残っています。最期は自宅で家族に看取(みと)られて穏やかに逝かれ、後日、奥様からその報告とお礼の手紙を頂きました。

 患者さんやご家族から人としての立派な有り様を学ぶ。それがこの仕事のやりがいの一つになっています。(聞き手 竹内芳朗)

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