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(3)パネルディスカッション 健康人は歯が命

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日本歯科医師会常務理事 倉治 ななえ(くらじ・ななえ)さん
 1979年、日本歯科大歯学部卒。83年、東京都大田区にクラジ歯科を開設。2011年、同大病院臨床教授。同年から現職。
ロンドン五輪日本代表選手団主将 村上 幸史(むらかみ・ゆきふみ)さん
 今治明徳高(愛媛)でやり投げを始める。2002年、日大文理学部卒業後、スズキ入社。09年、世界陸上ベルリン大会で日本人初の銅メダル。アテネ、北京、ロンドン五輪出場。

定期検診が不可欠

倉治ななえさん

 ――子どものむし歯は減ってきているようですが、大人の状況はどうでしょうか。

 羽村 特に高齢者は、歯と歯茎の間、つまり歯の根元にできるむし歯が問題になっています。自分では見つけにくく、歯が折れて初めて気付くこともよくあります。詰めることができない場所なので治療も難しい。定期検診での、予防や早期発見が大切です。

 ――昨年8月に歯科口腔保健法が施行されました。私たちの生活にどう影響を及ぼすのでしょうか。

 倉治 歯科の定期検診は、むし歯の予防や早期発見に欠かせません。口の中を良い状態に保つことは、全身の健康にもつながるのに、公的な取り組みは不十分です。

 今回の法律では、「国民の歯を守ることは国や自治体の責務」とされました。これは、生涯を通した切れ目のない公的な歯科検診を行う裏付けになりました。施行から1年たち、同じ趣旨の条例を策定する都道府県や市町村も広がりつつあります。

 公的検診の充実のために、皆さんもぜひ、お住まいの自治体に「条例の策定はまだですか」「公的な歯科検診はないのですか」と声をあげていただきたいと思います。

 ――村上さんは、アスリートとして歯の健康で気をつけていることはありますか。

 村上 やり投げでは、ひじやひざに負担がかかり、痛むことがよくあります。でも本番になれば、競技に集中しているのであまり痛みを感じません。しかし歯が痛むとなると、そうはいかないと思います。競技中でも相当気になり、集中できなくなってしまうでしょう。パフォーマンスに影響を及ぼさないよう、普段から、日常の歯磨きなど当たり前のことを続ける基本を大切にしています。

キシリトール入りガム活用

村上幸史さん

 ――むし歯予防には、キシリトールも効果的とのお話がありました。具体的な使い方を教えてください。

 羽村 キシリトール入りのガムでは、1日3回以上、できれば5回かんでください。朝、昼、晩の食後3回のほか、おやつの後と寝る前です。大人の場合だと、量は1日最低でも5グラム(市販のガムなら1パック程度)、できれば10グラム近くを、最低3か月続けないと効果は出ません。習慣として取り入れてほしいと思います。

 フィンランドでは、1972年に国民健康法ができて、予防を重視するようになりました。国民も、キシリトール入りの製品を積極的に使うことでむし歯を減らすことができました。

 もちろん、キシリトールだけで完全に予防ができるわけではありません。フィンランドの人たちは、きちんと歯科医に通っています。口の中を健康に保つには、歯科医や歯科衛生士の力が必要だと理解しているからです。

 村上 フィンランドではやり投げが盛んです。合宿で何度も訪れました。フィンランドの選手はみな、良い笑顔です。むし歯がないきれいな歯だからでしょう。キシリトール入りのガムもよくかんでいます。私も、かかりつけの歯科医のアドバイスで、試合中にはかめませんが、リラックスしたい、落ち着きたい、という時にかんでいます。

 ――スポーツ選手は、競技中に歯を食いしばることもあると思いますが、かなりの負担がかかるのでしょうか。

 下山 歯を強くかむ力を測定すると、ほぼその人の体重程度になりますが、スポーツ選手だと、私たちよりはるかに高い数値かもしれません。くいしばると、かむ筋肉を強く収縮させ痛みを招いたり、血圧の上昇や呼吸の乱れを起こしたりする恐れがあります。歯にも負担がかかり、歯が割れたりすり減ったりします。

 村上 ウエートトレーニングの時には、歯に負担がかかると思うのでマウスガード(マウスピース)を装着しています。ただ、やり投げの競技中は、常時食いしばるわけではありません。遠くにやりを投げるためには、投げる瞬間に一気に力を加えます。その時だけ食いしばるわけです。

コーディネーター 南砂・医療情報部長

 下山 マウスガードは、選手同士が激しくぶつかり合うコンタクトスポーツをする際のけが予防としても、重要です。市販品もありますが、きちんと歯科で歯型をとってもらい、歯並びや口の形に合うように、細かな調整をして作ったマウスガードを入れてほしいと思います。

 ――昨年は、スポーツ基本法も成立しました。これからはスポーツ専門の歯科医養成にも力が入るようです。どのような取り組みでしょうか。

 倉治 法律では、スポーツに関する研究や施策に関わる学問として、医学や生理学と並んで「歯学」も位置づけられ、スポーツ基本計画が策定されました。これを受けて来年度から、日本歯科医師会と日本体育協会が、スポーツ専門の歯科医「認定スポーツデンティスト」を養成することになりました。2年間かけて学ぶので、誕生するのは3年後になります。

 今後はスポーツデンティストが、公的な立場でオリンピックや国体へ同行し、選手のパフォーマンスの向上に貢献できると思います。

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