文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

不妊のこころ

からだコラム

[不妊のこころ]「普通の家族」 願いとのズレ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 生殖技術の発達は、不妊のご夫婦はもちろん、単身者や同性カップルにも、第三者からの精子や卵子の提供を受けたり、代理母を利用したりすることで、家族を増やすことを可能としました。

 米国では、体外受精の約1割が、提供された卵子や受精卵(胚)を利用したものとなっているほどです。一方、国内では、非配偶者間の生殖医療は、法律婚夫婦に対する提供精子を用いた人工授精だけが認められ、ほかは、制限されています。

 でも、海外に渡航し卵子提供などを受けるご夫婦も増えているようです。話を伺うと、多くは自分たちが新しい形の家族を作ると捉えているわけではなく、あくまで「普通の家族」になるための手段として利用しているように感じます。

 この考え方が問題というわけではないのですが、心配なのは、「普通の家族を作りたい」との願いが、非配偶者間生殖医療を利用したことを隠す方向につながることです。そうなると、生まれてきた子に対し、親がうそをつき続けることになってしまいます。

 事実を隠せば親子関係に不自然さが生まれ、お子さんが苦しむ結果となっては、「幸せな家族を作りたい」という、元々の願いとずれてしまいます。

 様々な家族の成り立ちがあり様々な幸せがあるという真実を、社会全体で共有することが、「隠さなければならない」プレッシャーを減らすことにつながります。生まれてくる子どもの未来のために、私たちひとり一人が自身の偏見と向き合う必要があるのではないでしょうか。(平山史朗・東京HARTクリニック生殖心理カウンセラー=東京・南青山)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

karada_400b

 
 

からだコラムの一覧を見る

不妊のこころ

最新記事