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漫画家・松本零士さんインタビュー(2)自分の思い しっかり伝える

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 ――お仕事で転機になった出来事はありますか。

 「東京の本郷に下宿していた時、インキンタムシが大はやりで、みんな人知れず悩んでいました。ある日、新聞記事で治療薬を知り、使うとすぐに治った。こんなに良いものならもっと知らせなければと、連載漫画に薬を実名で登場させたんです。すごい反響で、感謝の手紙が山ほど届いた。それ以来、漫画もただ楽しいだけでなく、メッセージ性が必要だと思うようになり、実践してきました」

 「ちなみに、女性からも感謝の手紙が届きました。森木深雪さんという女性は『彼がすっかり元気になりました』と書き送ってくれました。後にこのお名前を拝借し、真ん中の木と深を取って、宇宙戦艦ヤマトの森雪さんになりました」

 ――お仕事で壁に突き当たったことはありますか。

 「テレビアニメの宇宙戦艦ヤマトが、低視聴率で26話で打ち切りになった時は無念でした。『こうなったらライオンと戦ってやろう』とアフリカを旅したのですが、満天の星と悠久の大自然の中で、『俺は何て小さなことで悩んでいたんだ。微々たるものに縛られず、やりたいことをやればいい』と思えてきた。そして元気に帰国すると、ヤマトのブームが起こったんです」

 ――海外でも作品が高く評価される理由は。

 「海外で人気が高いキャプテンハーロックの信念は『俺の旗の下に俺は自由に生きる』。自分の道は自分で決めて、結果に責任を持つということです。人生で最悪なのは人を恨んで生きること。自分で決めた道であれば、後悔はしても人を恨めない。自律的な生き方へのあこがれは、万国共通なのだと思います」

 ――海外でたくさんの人と交流する機会も多いと思いますが、外国人とうまく付き合うコツを教えてください。

 「自分の意思を相手にはっきり伝えることですね。されて嫌なことは『イヤ』ということも大切です。以前、海外で乗った飛行機で、客室乗務員から露骨な差別を受けたことがありました。私の機内食だけ『ない』というのです。腹がたったので『このレイシスト(差別主義者)め。俺はサルじゃねえ。二度と俺のそばに近寄るな!』と英語でまくし立てたんです。降りる時には機長がやってきて、私の手を握りしめながら、『嫌な思いをさせて申し訳ない。もう二度とこんな思いはさせないから、今度来た時は、また私の飛行機に乗って欲しい』と謝罪してくれました」

 「余談になりますが、海外旅行で困らない程度の英語力を身につけられたのも、学生時代の英語の先生のおかげです。世界的な漫画家になるためには英語力が欠かせないと、うまい具合におだてて勉強させてくれたんです。感謝しています」

 「ハリウッドでパーティーに参加した時には、ディズニーのアニメの仕事をしている若者2人が私に質問してきました。『あなたは原爆をどう思っているんだ』。米国人の胸の内にも、そうした後ろめたさがあるのですね。私が『聞いてくれてありがとう。あなたたちの誠意はよく分かった』と答えたら、ほっとした顔をしてくれました。その後、話がはずみ、名作映画の裏話まで聞くことができました」

 「自分の思いをしっかり伝えること。それと宗教や思想、信条など、その国の人が信じているものには敬意を払うこと。これが国境を越えて分かり合う秘訣だと感じています」

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