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[梶原しげるさん]英語を再び 世界広げる

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「もう年だから、などと言ってあきらめたらもったいない。興味を持ったらいつだって学べるし、何とかなりますよ」(東京都内で)=増田教三撮影

 カバンから取り出して見せてくれたのは、大量の英語教材だった。ラジオ講座のテキスト、市販の参考書、指南書。それに、ラジオと録音機器――。興味を持ったら、すぐにその教材を試してみる。「全部を学び終えたわけじゃありませんよ」と笑うが、この秋はニューヨークに行き、語学やスピーチなどの短期講座にも参加。意欲的だ。

 英語の学び直しを本格的に始めたのは、3年ほど前。長女がアメリカ人と結婚したのがきっかけだ。娘の夫やその家族と自由に話せるようになりたいと考えた。今では、スカイプ(インターネット上のテレビ電話)を使って、大統領選の話や新しくできたスーパーの話をするまでになった。5分間のスピーチを聞いてもらうこともある。簡単なやり取りでも、続けることで会話力は少しずつ進歩し、お互いの距離も縮まる気がする。

 東京のラジオ局、文化放送に入社。小気味よい語り口で知られる。冠番組「梶原しげるの本気でDONDON(ドンドン)」では、一つのニュースを深く掘り下げた。12年間続く人気番組となった。フリーに転身後は大学院で心理学を専攻。現在は大学の講師も務める。

 学生時代と比べると、今は英語を学ぶ環境に恵まれている。インターネットを通じて多くの情報を入手できる。興味のあるテーマを英語で検索するだけで、様々な国の人が記した論文や意見に出会える。それを読み解くだけでも楽しい。東日本大震災の発生後には、アメリカのニュースもパソコンで読んだ。日本の報道とは異なる角度から被災者の様子や原発事故の影響などを伝えていた。考え方の幅が広がった。

 知的好奇心を刺激される毎日。子どもの頃に新しい教科書を開いたときのドキドキワクワクする気持ち、新しいことを一つ覚えたときの達成感。あの感覚を再び味わえる。「それに、今なら成績も付かないし、落第もない。なんて気楽なことか」と笑う。

 ありきたりだが、何かを始めるのに遅すぎることはないと考えている。

 若い頃に比べれば覚えるスピードは遅く、昨日覚えた英語の言い回しを今日は忘れたということもしばしば。恥をかくこともあるが、こればかりは仕方ない。だが、この年でもやり直しがきくというのを見せたい。小さな成功体験を積み重ねることが、前に進む力になる。

 学んだ英語を使って何をしようか。アメリカにいる孫は今、生後4か月。「彼がしゃべり始めるまでに英語力をつけて、たっぷり話をしたい。まだ2年ぐらいあるから大丈夫」。あとは、アメリカで行われるパフォーマンスの大会に出場し、演歌とブルースを比較するスピーチをするのも夢だ。

 還暦を過ぎて手に入れた新たなおしゃべりの道具・英語。目の前に新たな世界を広げてくれている。(上原三和)

 かじわら・しげる フリーアナウンサー。1950年、神奈川県生まれ。73年、文化放送に入社。バラエティーから報道番組まで幅広く担当し、92年にフリーに転身。その後、東京成徳大学大学院心理学研究科で修士号を取得し、現在は同大講師。日本語検定審議委員。近著に「ひっかかる日本語」(新潮新書)。

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