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[基調講演] 高齢社会での対策 重要

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  めまい・耳鳴り・難聴をテーマにした「医療ルネサンス宇都宮フォーラム」が9月27日、宇都宮市の市文化会館で開かれ、約450人が参加した。慶応大病院耳鼻咽喉科教授の小川(かおる)さんが、「予防と治療の最新情報」をテーマに基調講演。その後、小川さんが南(まさご)・読売新聞東京本社医療情報部長と対談し、症状への具体的な対処法をアドバイスした。

慶応大病院耳鼻咽喉科教授 小川 郁(おがわ・かおる)さん
 1981年慶応大医学部卒。米・ミシガン大クレスギ聴覚研究所研究員などを経て、2002年から現職。日本耳鼻咽喉科学会評議員、国際聴覚医学会理事、厚生労働省の急性高度難聴調査研究班班長などを務める。

基調講演講師
慶応大病院耳鼻咽喉科の小川郁教授

 高齢社会を迎えた日本では、難聴、耳鳴り、めまいへの対策が重要になっています。こうした症状を伴う高齢者は、外に出なくなって社会的に孤立する、老人性のうつや認知症が進む、といった様々な問題が生じるからです。

 難聴は大きく二つに分類され、このうち音が伝わる過程に障害が生じる「伝音難聴」は、手術で聴力を回復できます。一方、音を感じ取る過程に障害が起こる「感音難聴」は、治すのが非常に難しいと言えます。

 感音難聴のうち、突発性難聴やメニエール病は治る可能性がありますが、高齢になって症状が表れる加齢性難聴や、長い間うるさい場所で仕事をしたことなどによる騒音性難聴は、残念ながら治りません。

 慢性の難聴で一番多い加齢性難聴は、非常に個人差が大きい。若い時に耳を酷使すると早く悪くなると言われます。若いうちに聞こえなくなる「特発性難聴」の原因は、最近見つかった難聴の遺伝子だと言われます。これからは、予防も可能になっていくでしょう。難聴の対処法として、補聴器や埋め込み型補聴器、人工中耳、もっと悪い場合には人工内耳があります。

 突発性難聴は、風邪や睡眠不足が続いた後に発症することがあり、目が回る「回転性」のめまいが起こる場合もある。完治するのは約30~40%。特効的な治療法はなく、なるべく早くステロイドを使った治療を受けることが必要です。

 メニエール病は、難聴に加えて、耳鳴りや耳が詰まる症状が表れ、めまいの発作を繰り返します。まだ原因はわかりませんが、一番大切なのはストレス対策と言われています。

 難聴などの症状を伴わない「良性発作性頭位めまい症」は、耳の中にある「三半規管」の異常で起こるめまいで、一番多いとされます。なでしこジャパンの沢穂希さんが、ロンドン五輪前に大変苦労をされました。耳の中にあるカルシウムの結晶「耳石」が三半規管の中に落ちて動くことが原因で、若い方より高齢者に多いのです。

 めまいとともに意識がもうろうとする、ろれつが回らない、手足のしびれや強い頭痛がある――という場合は、頭の中の問題が考えられます。一刻も早く、大きな病院や脳神経外科を受診してください。

 耳鳴りは、約20%の人が経験していると言われます。耳鳴りの難しさは、自覚的な症状で他人に理解してもらえないこと、苦痛の個人差が大きいことです。何もしないで済む方が8割いる一方、あちこちの病院を回る方もいます。いい検査法や根本的な治療法がないのです。たかが耳鳴りと言う方もいますが、されど耳鳴りなのです。

 2割の方は、耳鳴りをつらく感じるような悪循環が脳で生じます。この悪循環を断つには、順応することです。完全に治すというより、苦痛から解放されることを治療の目標にすると、耳鳴りとのつき合い方がだいぶ違ってきます。

 最近、「ネラメキサン」という世界初の耳鳴り治療薬が開発されました。ヨーロッパとアメリカ、ブラジル、日本で国際共同治験が行われており、私は大変期待しています。頭を磁気で刺激して耳鳴りを取る方法も注目されています。私も左側に少し耳鳴りがあり、この治療を1回受けるとだいぶ小さくなります。耳鳴りは「治らない」時代から、「少し治せる」時代に変わっていくと考えています。


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