小川恵子の漢方で健康生活
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慢性腎不全
早いもので、漢方ブログも今回を含めてあと3回で終了となります。残り少なくなりましたが、少しでも漢方のことを知っていただけるようにお話ししていきたいと思います。
腎臓は、重要な臓器です。尿を体外に出すということは、人体にとって老廃物を体外に出すことで、言うまでもなく、腎臓がこの機能を司(つかさど)っています。慢性(数カ月~数年)に進行する腎臓の病気によって、徐々に腎機能の低下が進行する病態(状態)を慢性腎不全と言います。原因としては、慢性糸球体腎炎が一番多くて50%、次いで糖尿病性腎症で15%と言われています。
慢性腎不全の最大の治療目標は、慢性腎不全の進行を食い止めて、少しでも透析療法への移行を遅らせることにあります。慢性腎不全は基本的にどんどん悪くなる進行性の疾患です。西洋医学的には、腎臓の機能は、多少の変動はあっても良くなることはないとされており、薬物療法や食事療法、安静療法により、少しでも進行を遅くさせることが目標とされています。
腎不全が進行して代謝性老廃物が血液中に蓄積すると、疲労感や脱力感を感じるようになり、注意力が低下します。食欲減退や息切れが起こることもあります。疲労感や脱力感は、赤血球の産生量が減少して貧血になっていることでも生じます。慢性腎不全の人はあざができやすくなったり、切り傷などのけがをすると、出血が簡単に止まらなくなったりする傾向があります。慢性腎不全になると、感染に対する体の抵抗力も低下します。代謝性老廃物が血液中に蓄積すると、筋肉や神経が損傷を受け、筋力低下、けいれん、痛みなどが起こります。腕や足にチクチクするような感覚が生じたり、特定の部分の感覚がなくなったりします。慢性腎不全の患者さんは足が攣(つ)りやすいのですが、この症状には芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)がよく効きます。血液中に代謝性老廃物がたまることによる吐き気、嘔吐(おうと)、口の中の不快感、栄養不良や体重の減少には、漢方では「津液(しんえき)」を補うことによって改善されると言われています。初期であれば、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などもある程度有効です。また、慢性腎不全の人では、全身がかゆくなることもあります。この場合は、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や梔子柏皮湯(ししはくひとう)などが有効な場合があります。
慢性腎不全が進行しても、透析療法がありますから、すぐに生命にかかわることはありません。しかし、透析は、腎機能を完全に代行しているわけではありません。では、腎機能を改善させる漢方薬はあるのでしょうか。煎じ薬でしか処方できませんが、養腎降濁湯(ようじんこうだくとう)が慢性腎不全における腎機能を改善させるという臨床報告が散見されます。さらに研究が進むことが期待されています。
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現代医学において、毒性物質の代謝は肝と腎におけるものがほとんどとされています。実際薬物の副作用リストで、肝や腎の障害を外す方が難しいですね。けれ...
現代医学において、毒性物質の代謝は肝と腎におけるものがほとんどとされています。
実際薬物の副作用リストで、肝や腎の障害を外す方が難しいですね。
けれども、腹膜透析は効果がありますし、お酒を飲んだ翌日の体臭を考えれば、他の代謝機構も考えられます。
もしかしたら、漢方薬は腎以外の排泄能力を促進して、その結果として腎の負担が軽くなって、機能回復を及ぼすのかもしれません。
まあ、iPSに負けないように頑張ってください。
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