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不妊のこころ

からだコラム

[不妊のこころ]親になることの意味

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 「彼と別れようと思います」

 面接中の突然の告白に、耳を疑いました。

 不妊や治療の影響で、お互いの気持ちが修復不可能なほどずれてしまったり、価値観の違いに気づいたりして、二人が別々の人生を歩む決断をされることがないわけではありません。でも、彼女は、体外受精を受けて妊娠中で、出産をする病院にもうすぐ紹介される段階だったのです。

 彼女は言います。「妊娠して、ようやくわかったんです。彼とずっと一緒に生きていけるかと考えた時、私も、おなかの子も、幸せにはなれないなって」

 離婚や中絶を考えている彼女を、無責任と批判するのは簡単でしょう。なぜ妊娠する前に気づかなかったのか、もっと早く気づいていれば、おなかの中で確かに息づいている我が子の命について、悩まなくてもよかったはずなのに、と。

 日本では、1年間に20万件以上の人工妊娠中絶が行われています。彼女の場合は、不妊治療を受けてまで妊娠したのにどうして、と不思議に思われるかもしれません。ですが、妊娠の方法に関係なく全てのカップルが、なぜ親になりたいのか、家族を作るとはどういうことかを、よく考えるべきです。

 不妊カップルは、妊娠が容易でないからこそ、少し立ち止まって、自分たちが子どもを持つ意味や親になることについて話し合う機会が持ちやすいかもしれない、とも私は思います。その経験は、彼らが実際に子どもを授かり、育んでいく時に、親としての自信につながると信じています。(平山史朗・東京HARTクリニック生殖心理カウンセラー=東京・南青山)

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