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「抑うつ」起こす引き金…眼瞼けいれん
まばたきがうまくできず、しまいには目が閉じて、引きこもりがちになる――。眼瞼けいれんという病気は、つらい症状などから患者の半数が抑うつ状態になってしまう。
抗不安薬・睡眠薬の副作用も
「朝、犬の散歩と家事を終えたら、日中はずっと家で、目を閉じて過ごしていました」
川崎市の主婦(71)は、2005年秋ごろから、目の不調に悩んできた。まばたきの回数が増え、その動きも、ぎこちなくなった。外に出ると、まぶしさを感じるようにもなった。
近所の眼科に1年通った後、井上眼科病院(東京・神田駿河台)を受診、名誉院長、若倉雅登さんの診察で、眼瞼けいれんと診断された。
眼瞼けいれんは、脳の神経に支障が出て起こる。病名から、単に「まぶたがピクピクする病気」と思いがちだが、様々な症状が出る。まぶたの動きが不自然になり、目を上手に開けられず、まばたきが増える。感覚も過敏になり、強いまぶしさや、目の乾きを訴える。
自然と目が閉じてしまい、歩いていて人や電柱にぶつかったり、絶えず目が気になってしまい、集中力が低下したりすることで、生活も不自由になる。
同病院の眼瞼けいれん患者を調査したところ、48%が抑うつ状態とわかった。若倉さんによると、うつ病など精神的な病気や、強いストレスをきっかけに発症するケースが多い上、眼瞼けいれんの原因である脳神経の異常が、抑うつも起こすと考えられるという。
主な治療は、まぶたの筋肉の緊張を和らげる薬を注射する「ボツリヌス療法」だ。保険が利く。ただ1回の注射の効果は2~4か月と一時的だ。
症状を和らげる眼鏡もある。まぶしさの原因となる光のみを遮る特殊レンズや、まぶたを上から抑えるワイヤをつけたものがある。
問題なのは、抗不安薬・睡眠薬として使われるベンゾジアゼピン系薬剤やエチゾラム(商品名・デパスなど)の副作用で起こるケースがあることだ。患者の約30%が、発症前から服用していた、との調査がある。
実は川崎市の主婦も、睡眠薬としてベンゾジアゼピン系薬剤を服用していた。飲むのをやめたら、症状が徐々に改善した。「音声しか聞けなかったテレビのドラマも、画面を見て楽しめます」と喜ぶ。
ベンゾジアゼピン系薬剤やエチゾラムは、長期に服用すると依存性が高まる。処方する医師の多くは、眼瞼けいれんと薬の関連を知らず、眼科医もドライアイや白内障を疑うことが多い。発見が遅れると、薬をやめられなくなり、眼瞼けいれんの改善も難しくなる。
若倉さんは「周囲に、つらい症状を理解してもらえないことで抑うつが重くなることもある」と指摘、病気への理解を呼びかける。(中島久美子)
眼瞼けいれんの主な症状
・まぶしい
・目をつぶっていたい
・目が乾く
・目が自然に閉じてしまう
・目がごろごろする
・まばたきが多い
・みけんにしわが寄る
患者会 |
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2004年に、「眼瞼・顔面けいれん友の会」(http://www.gankenganmen.jp/)が発足した。医師の話や患者の体験談を聞く例会のほか、患者同士の交流会を行う。問い合わせは、tomonokai@gankenganmen.jp |
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