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[広がる世代間格差] (2)幸運だった人はお返しを

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世代内格差について話す社会学者の古市憲寿さん(右)と評論家の樋口恵子さん

 ――団塊の世代(1947~49年生まれ)は恵まれているといわれるが。

 古市 一番ラッキーな世代だと思う。経済成長とともに成長し、経済が落ちてきた時に自分も老いてきた。就職も難しくなかったし、正社員として定年まで勤められた。ただ、それを羨ましがっても仕方ない。

 樋口 どの時代に生きるかは自分では選び取れない。その代わり、幸運な世代は、何かしらのお返しをしてほしいと思う。最近、私は高齢者仲間に、「食い逃げはするまいぞ」と言っている。私たちの世代は、若い世代に比べれば、年金などは恵まれている。だから少しでも働いて、その分、気分よく消費して、税金も払いましょうよと。ボランティアもいい。

 ――若者と高齢者の利害が対立しているというイメージを解消するにはどうしたらよいか。

 古市 世代間格差をあおって、得するのは誰か。女性と若者は社会で置かれている状況がすごく似ているので、利害が一致する。女性は、社会の中核から少し外れたところで、安い労働力とみられてきたし、若者もそう。対立構造は、「高齢者VS若者」ではなく、「既得権を手放さないおじさんVS女性+若者」だと思う。

 樋口 その通り。若者と対立点なんてない。若者も女性も社会で活躍できるようにすることが、社会保障のみならず、社会の持続性を高めることにつながる。

 ――少子化が進むほど、後の世代は負担が大きくなって格差が広がる。格差を縮めるためにも少子化を食い止めた方がいいのに、少子化がとまらない。なぜか。

 古市 若年層向けの社会保障給付が少ないままでは解決しない。

 樋口 女性が子どもを産みながら働き続けられるように、育児休業、男性の育児参加、保育所の拡充など当たり前の政策を着実に実行すること。女性の活躍にこれまで本気で取り組まなかった企業の責任は大きい。

 ――高齢世代に言いたいことはあるか。

 古市 少子化をもう少し早く何とかできなかったのかと言いたい。女性が働くのはいいことばかりだ。税金を納めてくれるし、育児や外食などのサービス産業が発達し、雇用も生まれる。

 樋口 日本の社会は、男が外で猛烈に働き、女が家庭を守るという性別役割分業で回ってきた。高齢世代の罪は、そうした役割分業を温存し、若い世代に結婚や子育ての楽しさを十分に伝えてこなかったことだ。

 ――若者世代に言いたいことは。

 樋口 もっと面と向かって話し合いましょうよ。親、子、孫、ひ孫といった4世代が同時代を生きているのは素晴らしいのに、じかに接触する機会がすごく少ない。

 古市 若者、高齢者という抽象的な存在がいるわけじゃない。実際会って対話した方が得るものがある。老いるとはどんな気持ちなのかも聞いてみたい。

 樋口 正直、老いはつらい。でも、50歳で死ねばよかったかというと、それは違う。私の仕事盛りは60歳代。まだ書きたい本もある。

 古市 樋口さんのように人生を楽しんでいる人を見ると、老いるのも悪くはないな、と思う。

75歳と35歳 過ごした年代比べると

 世代間格差はどのような時代背景から生じたのか。75歳の高齢者と35歳の若者が、それぞれの人生を過ごしてきた時代を、年表で比較した。


 
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