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[広がる世代間格差] (1)若者・高齢者話そう

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古市憲寿さんと樋口恵子さん 27歳学者 VS 80歳評論家

 年金などの受給額と負担額には若者と高齢者の間に大きな格差があり、後に生まれた世代ほど不利だといわれている。「世代間格差」を各世代はどうとらえているのだろうか。インターネットによる意識調査のほか、若者、高齢世代を代表して、社会学者の古市憲寿さん(27)と評論家の樋口恵子さん(80)に語り合ってもらった。(座談会は8月下旬に東京本社内で開催、司会は田中秀一・論説委員)

女性と若者 立場似ている

古市憲寿さん

ふるいち・のりとし 1985年、東京都生まれ。慶応大卒。東京大学大学院博士課程で社会学を専攻。著書に「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社)など。

 ――世代間格差が注目されている。どう見るかから、伺いたい。

 古市 負担と給付の金額だけ見ると格差は確かにある。ただ、高齢者は、給付を当たり前だと思っているから、格差はないと思っている人が多いのでは。それに、高齢者の中には、豊かな人も貧しい人もいる。若者もそう。だから、世代で切り分けて、格差を是正すればすべてうまくいくという議論は、乱暴だと思う。

 樋口 議論の大前提として、世代間の公平なんてあり得るのか。私たちの世代で、大学進学できたのはごく一部。経済的な理由で進学できない人は少なくなった。年金をもらい過ぎだなんて言われたら、「私たちの世代は貧困に耐え、若いうちから働いてきたのよ」と言い返したい。世代間の不公平は時代の宿命だ。もちろん、公平を期すために政策的な努力は大切だ。

 ――今は就職氷河期で、非正規雇用の若者が多い。若者は不遇か。

 古市 消費の面では恵まれているが、働く面では大変だ。道路などのインフラや教育環境が整い、安いお金でそれなりに楽しく暮らせる。親と同居していれば、より楽に暮らせる。しかし、同じ会社で働き続けられた親世代のような人生を送ることはできない。その意味では不遇といえる。

 樋口 若者の不幸は賃金が低いこと。雇用が不安定化し、非正規雇用者層が固定化している。改善すべき最大の課題だ。

 ――そうした状況を、若者自身は深刻に受け止めているのだろうか。

樋口恵子さん

ひぐち・けいこ 1932年、東京都生まれ。東大卒。評論家。東京家政大名誉教授。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。著書に「祖母力」「女、一生の働き方」など。

 古市 20歳代は、将来への不安は感じながらも、そんなに不幸だとか不遇だとは思っていない。20歳代の頃は、フリーターも大企業の正社員も給料にそれほど大きな差がない。身近な同世代と比べて差がないから、不安や不満を感じにくいためだ。ただし、親が老いる20、30年後のことを考えると大変だし、恐ろしい。

 ――それでは高齢者は幸せか。社会保障給付の大半は高齢者向けで、年金もいっぱいもらっているといわれるが。

 古市 確かに金額だけ見れば得をしているように見える。でも、大企業で働き、企業年金ももらえる人と、自営業で国民年金しかない人との差はものすごく大きい。生活保護を受ける高齢者も増えている。

 樋口 日本の社会保障給付費の7割が高齢者向けなのは事実。でも、GDPに対する給付費全体を諸外国と比べると、決して高くない。乏しい費用の中で、高齢者と若者が綱引きするのはばかばかしい。高齢者は豊かだといわれるが、国民年金だけで暮らす「BB(貧乏なおばあさん)」が多数いることも忘れないで。低年金の高齢者には住宅を保障するなどの手を打たないと生活保護費が膨らむばかり。世代内格差の是正が先だ。

◆   ◆   ◆

世代間格差

 一生の間に政府や自治体から受ける年金などの受益と、税金や保険料などによる負担の差が世代によって異なることから生じる格差。2005年度の年次経済財政報告の試算(03年度時点)では、1世帯あたりの生涯の受益額と負担額を世帯主の世代ごとに比較すると、60歳以上の世代は受益が負担を4875万円上回るのに対し、20歳未満の世代では負担の方が4585万円多い。政府の社会保障・税一体改革では、「世代間の公平性の確保」は重要な視点の一つとなっている。

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