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カルテの余白に

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道免和久 兵庫医大リハビリテーション医学教授(中)ありのまま 受け入れる

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 兵庫医大(兵庫県西宮市)のリハビリテーション医学教授、道免(どうめん)和久さん(51)は、ロボット工学や脳科学などの新たな知見をリハビリに採り入れる一方、心のケアも大切にしている。

ロボットを使ったリハビリで、左半身まひの患者に「自分で腕を動かしているイメージを持つことが大切」と話しかける道免和久さん(兵庫医大病院で)=笹井利恵子撮影

 

先端医療を採用

 <同医大病院の一室で腕がまひした患者が取り組むのは、ロボットアームを使ったリハビリだ。棒状のアームの先端部にまひした手を載せ、パソコンの画面上に示された、動作の方向に合わせて、アームをゆっくりと動かす。男性患者の額から汗がにじんだ>

 体のまひの程度が重ければモーターの付いたアームで、腕を動かします。症状が徐々に改善していけば、負荷を加え、筋力の回復を促し、脳細胞に刺激を与えます。脳卒中などでは発症から半年を過ぎると、体の機能改善が難しいと考えられていました。しかし、適用患者は限られるものの、効果が出る場合があり、若い医師らには先端のリハビリ医療を研究するよう勧めています。

 <米国から脳卒中で体の片側がまひした患者のための集中訓練「CI療法」というリハビリを2003年から導入した。最初の患者は脳こうそくで右半身がまひした60代男性で、指を少し伸ばせるだけだった>

 まひした手を集中的に訓練します。引き出しの開け閉めといった単純な動作から、こよりを作るような細かいものまで、約60項目のメニューを用意し、患者の状態に合わせて難易度を上げていきます。

 男性は2週間で右手で財布を持ち、握手ができるようになりました。しかし字は書けませんでした。効果を感じてもらえるのか、疑心暗鬼でしたが、「病気になって自分の手じゃなかったのが、戻ってきたような感じ」とすごく喜んでくれました。

患者の心にも気配り

 <機能が回復する患者がいる一方、リハビリの効果が限られる患者もいる>

 教科書的には、患者が障害を受け入れることを助けるのが、リハビリの役割の一つだと書かれています。「手のまひが治ってほしい」と患者さんが言うと、スタッフは障害を受容してもらおうとしがちですが、そうした考えに疑問を持ち続けてきました。

 <肉体だけでなく、患者の心のあり方にも心を配る>

 ベッドの上でまひした手を見て涙を流したり、仕事のことを聞くと、「家族に迷惑をかけて申し訳ない」と突然泣き出したりする患者がたくさんいました。

 これからの自分の人生、家族の生活などに言い知れぬ不安を抱えているのでしょう。そうした様々な思いを抱え、障害を受け入れられない患者に「障害の受容」を促すより、私たちリハビリ医がすべきことは、まずは患者の状態をありのままに受け入れてあげることが大切だと思うのです。

 患者の苦しい胸の内を聞くカウンセリングもリハビリのチーム医療に組み入れたいと思っています。(聞き手 阿部健)

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