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白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部長(下)HIV感染 治癒の日信じて

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 昨年、国内の新規エイズ(後天性免疫不全症候群)患者数は、過去最多を記録した。新規のエイズウイルス(HIV)感染者も依然多く、増加傾向が続いている。国立病院機構大阪医療センター・エイズ先端医療研究部長の白阪琢磨さん(55)は、予防を呼びかけるとともに感染者や患者が差別されないような環境作りに力を注いでいる。

エイズ予防の啓発イベントに参加した白阪琢磨さん。「エイズは人ごとと思わずに注意してほしい」と呼びかけた(7月、神戸市中央区で)=枡田直也撮影

 

若者への啓発に尽力

 <性の低年齢化に伴い、エイズ予防には若年層への啓発活動が欠かせない。イベントや、高校、中学校での講演などで、その怖さを訴えている>

 感染経路は、圧倒的に性的接触です。感染者、患者とも男性が9割以上を占めますが、男性の多くは同性間での感染で、医療費は生涯で1億~2億円かかるというと、生徒の多くが驚きます。最初は、少し気恥ずかしくて騒ぐ生徒もいますが、身近な感染症であるということが分かってくると、寝る生徒はほとんどいないですね。

 <7月、神戸市で開かれた『KOBEエイズフェスタ2012 一緒に考え、想いを分かち合おう』に参加した。高校生らを前に感染者や患者との接し方などを話した>

 例えば、友人が感染し、その秘密を打ち明けてくれた場合、その時の友人の気持ちを大事にしてほしいのです。軽々しく誰かに「あの子感染しているらしい」などと告げたら、感染者や患者がどれだけ傷つくか。慢性疾患になったとは言え、ショックは第三者には計り知れません。

 <厚生労働省のエイズ動向委員会によると、昨年の感染者の約7割は20~39歳で、患者の約6割は30~49歳となっている。しかし、まれではあるが、10歳代で感染する子どももいた>

 男の子でした。ゲイの人は小中学生くらいで同性への興味に気づきます。その頃に感染しました。当然、未成年だから親にも知らせなくてはならない。そういう状況で人生のスタートを切ることになるのは、とてもつらいことです。特に10歳代の感染は避けなくてはと思います。それには、粘り強く啓発活動を続けるしかありません。

根深い誤解根絶へ

 <エイズ治療の歴史は、自らの医師人生と重なっている。「不治」と言われた時代から「慢性疾患」までの経過をつぶさに見てきた。一般への理解が進んだ一方で、根深い誤解も残るが、現場では希望を持って治療にあたっている>

 講演先で、年配の人からは「空気感染するのでは」「手に触れても大丈夫か」などの質問を受ける時があります。「絶対、感染はしない。大丈夫です」と言い切ります。そうした積み重ねが大事です。

 ドイツのベルリンで急性骨髄性白血病を発症したエイズ患者に、ある遺伝子が欠損した臓器提供者から骨髄を移植したところ、抗HIV薬を服用しなくてもウイルスが検出されなくなりました。特異な事例かもしれませんが、世界初の治癒例と言われています。20~30年後には、治癒できたと言える日が来ると思っています。(聞き手 秦重信)

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