文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

救急の現場から

からだコラム

[救急の現場から]「最善とは」 常に葛藤

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「どこまでがんばれますか……」

 若い医師が頭を抱えた。

 患者は、一人住まいの72歳の男性で、アパートの自室で倒れているところを発見され、救急搬送となった。

 「おそらく、最初に脳梗塞を起こしたんでしょう、その後、部屋の中で動けぬまま、誰にも気づかれなかった」

 郵便受けにたまった新聞を不審に思ったアパートの管理人が、警察官と一緒に部屋に入ったところ、排せつ物にまみれて倒れている男性を発見、7月下旬の閉め切った部屋の中は、蒸し風呂のような状態だったとのこと。救命救急センターに収容された時、男性は昏睡状態で、体温は40度を超えていた。

 「その結果、最重症の熱中症に、なったってことかい?」

 データは、男性が熱中症による急性肝腎不全に陥っていることを示している。

 「そっちの方は、得意のあの手この手で、何とかできるかと思うんですが、だけど、あの頭では……」

 頭部CT(コンピューター断層撮影法)検査で、左脳に梗塞を認めており、意識が回復するのかどうか予断を許さない。

 救命救急センターには、人工呼吸器はもちろん、人工心肺、血液浄化装置など最新の医療機器がひしめいている。それらを駆使すれば、肝腎不全状態をどうにかしのぐことはできるかもしれないが、しかし、その間に意識が改善してくれなければ、それらは際限なく続く中途半端な延命行為にしかならないのだ。

 「名前が救命救急センターなんて、おこがましいですよね、まったくのところ」

 最新医療の可能性と限界を知り、何が最善なのかという葛藤をし続けていくのが、救急の現場である。(救急医・浜辺祐一)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

karada_400b

 
 

からだコラムの一覧を見る

救急の現場から

最新記事