今こそ考えよう 高齢者の終末期医療
yomiDr.記事アーカイブ
あなたがしてほしくないことは、私にもしないで
これまで私たちは、欧米豪の高齢者介護施設を紹介しながら、日本の高齢者終末期医療の問題点を指摘してきました。わが国では、家族や医療者の判断で経管栄養などの医療行為が行われています。しかし、当の本人が満足しているかどうかは分かりません。なぜなら、本人は意思表示ができないからです。終末期医療の選択においては、家族も医療者も悩みます。選択した後でも、これでよかったのかと後悔の念に苛まれることがあります。
このような現実を考えると、本人、家族、医療者の誰もが納得する終末期医療を行うためには、リビング•ウイルや事前指示書を書いておくしかないように思います。しかし、これら書類のことを知っている人はごくわずかです。しかも法的に認められたものでもありません。
「患者を見殺しに」
高齢者の終末期医療は、いろいろな問題を含んでいます。1分1秒でも延命させることが使命だと思っている医療者もいます。そのため家族が自然な看取りを希望すると、退院を迫られることがあります。また、ある介護施設の看護師は、自然な看取りの経験を発表した時に、会場の医師から「結局、あなたがしたことは、患者を見殺しにしたに過ぎない」と非難されました。
たとえ植物状態であっても生きている意味があると考える人たちには、自然な看取りは殺人行為にみえるでしょう。訴えられる可能性もあります。
急性期病院では、在院日数を短くするために、胃ろうを造って退院させざるをえない事情もあります。親の年金をたよりに生活しているため、少しでも長く親に生きていてほしいと思う人がいるのも事実です。
Aさんが残した言葉
最後に、92歳のAさんの話をしたいと思います。Aさんが何も食べられなくなったので、娘さんにいくつかの治療の選択肢を提案しました。そのとき、娘さんは「日ごろ母は、延命処置はしないでちょうだい。迷ったら、“あなたがしてほしくないことは私にもしないで”、と話していました」と言いました。この言葉は、今まさに求められている高齢者終末期医療のあり方を教示しているのではないでしょうか。(宮本顕二、礼子)
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ブログ「今こそ考えよう 高齢者の終末期医療」は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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私も同じ体験をしました
kenken
8年前に父を失いました。悪性リンパ腫の末期でした。 生きることに貪欲な生命力の強い頑張り屋の父でしたので、意識を失ってからも、 イロウ等の延命措...
8年前に父を失いました。悪性リンパ腫の末期でした。
生きることに貪欲な生命力の強い頑張り屋の父でしたので、意識を失ってからも、
イロウ等の延命措置を医師に勧められ、長男として受諾しました。
それが恐らく父の意思だろうとその時は思ったからです。
最後は身体中にパイプをつながれ、苦しそうな表情のまま亡くなりました。
その数年後、私は腸閉塞で手術を受け、一週間同じく身体中にパイプを繋がれて、
父の苦しみの一部を初めて理解することが出来ました。実に辛かったです。
父はあんな医療を望んでいなかったと、今は大変後悔しています。
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医者から言って欲しいです。
ならなら
家族は医者から「こうすれば生きられる」という選択肢を出されたら、「いらないです」とは言えないと思います。 胃ろうにしろ、他の延命処置にしろ、医者...
家族は医者から「こうすれば生きられる」という選択肢を出されたら、「いらないです」とは言えないと思います。
胃ろうにしろ、他の延命処置にしろ、医者の方から「このまま穏やかに逝かせてあげる方が本人にとって一番良いのではないでしょうか」と言って欲しいです。
なぜなら、家族は後々苦しむからです。
本当はあの時、ああすればもっと長く生きられたんじゃないか。こうすればもっと長く生きられたんじゃないか。自分が楽したいばっかりに見殺しにしたんじゃないか。親は生きたいとおもっていたんじゃないか。介護疲れの方が大きいから、楽に死なせてあげたいと思ってしまったんじゃないか。
そういう繰り言を延々と遺された者たちは後になればなるほど考え出すんです。
だから、今の終末医療に意義があるなら、医者の方から、残されることになる家族が後で自分を責めて苦しまなくて済むような言い方をしてほしいと思います。
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知らなければ…
ケアマネ
老人ホームに勤めています。私も「自己選択・自己決定」が基本と考えます。しかし、選択・決定するための材料を持っていない高齢者が多いように感じます。...
老人ホームに勤めています。
私も「自己選択・自己決定」が基本と考えます。
しかし、選択・決定するための材料を持っていない高齢者が多いように感じます。
例えば、食事が摂れなくなったらどんな処置があるのか、経管栄養?点滴?
それをするとどうなって、しないとどうなるのか。
知らない上に漠然とした恐怖も手伝って、敬遠してしまうようです。
知らなければ選択もできません。
「自己選択・自己決定」のため、正しい情報を提供することも医療、福祉に携わる者の役割だと感じています。
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