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今こそ考えよう 高齢者の終末期医療

yomiDr.記事アーカイブ

あなたがしてほしくないことは、私にもしないで

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米オレゴン州・ポートランドのナーシングホームにて。入所者のミリ-さんを囲んで(左から2人目)

 これまで私たちは、欧米豪の高齢者介護施設を紹介しながら、日本の高齢者終末期医療の問題点を指摘してきました。わが国では、家族や医療者の判断で経管栄養などの医療行為が行われています。しかし、当の本人が満足しているかどうかは分かりません。なぜなら、本人は意思表示ができないからです。終末期医療の選択においては、家族も医療者も悩みます。選択した後でも、これでよかったのかと後悔の念に苛まれることがあります。

 このような現実を考えると、本人、家族、医療者の誰もが納得する終末期医療を行うためには、リビング•ウイルや事前指示書を書いておくしかないように思います。しかし、これら書類のことを知っている人はごくわずかです。しかも法的に認められたものでもありません。

「患者を見殺しに」

 高齢者の終末期医療は、いろいろな問題を含んでいます。1分1秒でも延命させることが使命だと思っている医療者もいます。そのため家族が自然な看取りを希望すると、退院を迫られることがあります。また、ある介護施設の看護師は、自然な看取りの経験を発表した時に、会場の医師から「結局、あなたがしたことは、患者を見殺しにしたに過ぎない」と非難されました。

 たとえ植物状態であっても生きている意味があると考える人たちには、自然な看取りは殺人行為にみえるでしょう。訴えられる可能性もあります。

 急性期病院では、在院日数を短くするために、胃ろうを造って退院させざるをえない事情もあります。親の年金をたよりに生活しているため、少しでも長く親に生きていてほしいと思う人がいるのも事実です。

Aさんが残した言葉

 最後に、92歳のAさんの話をしたいと思います。Aさんが何も食べられなくなったので、娘さんにいくつかの治療の選択肢を提案しました。そのとき、娘さんは「日ごろ母は、延命処置はしないでちょうだい。迷ったら、“あなたがしてほしくないことは私にもしないで”、と話していました」と言いました。この言葉は、今まさに求められている高齢者終末期医療のあり方を教示しているのではないでしょうか。(宮本顕二、礼子)

 ブログ「今こそ考えよう 高齢者の終末期医療」は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。

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201206終末期ブログ_サブナビ

宮本顕二、宮本礼子

宮本顕二(みやもと けんじ)
1976年、北海道大学医学部医学科卒業
北海道大学大学院保健科学研究院機能回復学分野教授

宮本礼子(みやもと れいこ)
1979年旭川医科大学卒業
桜台江仁会病院(札幌市)認知症総合支援センター長

ブログは2人が交代しながら書いていきます。

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22件 のコメント

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医者から言って欲しいです。

ならなら

家族は医者から「こうすれば生きられる」という選択肢を出されたら、「いらないです」とは言えないと思います。 胃ろうにしろ、他の延命処置にしろ、医者...

家族は医者から「こうすれば生きられる」という選択肢を出されたら、「いらないです」とは言えないと思います。
胃ろうにしろ、他の延命処置にしろ、医者の方から「このまま穏やかに逝かせてあげる方が本人にとって一番良いのではないでしょうか」と言って欲しいです。

なぜなら、家族は後々苦しむからです。
本当はあの時、ああすればもっと長く生きられたんじゃないか。こうすればもっと長く生きられたんじゃないか。自分が楽したいばっかりに見殺しにしたんじゃないか。親は生きたいとおもっていたんじゃないか。介護疲れの方が大きいから、楽に死なせてあげたいと思ってしまったんじゃないか。
そういう繰り言を延々と遺された者たちは後になればなるほど考え出すんです。

だから、今の終末医療に意義があるなら、医者の方から、残されることになる家族が後で自分を責めて苦しまなくて済むような言い方をしてほしいと思います。

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知らなければ…

ケアマネ

老人ホームに勤めています。私も「自己選択・自己決定」が基本と考えます。しかし、選択・決定するための材料を持っていない高齢者が多いように感じます。...

老人ホームに勤めています。

私も「自己選択・自己決定」が基本と考えます。
しかし、選択・決定するための材料を持っていない高齢者が多いように感じます。
例えば、食事が摂れなくなったらどんな処置があるのか、経管栄養?点滴?
それをするとどうなって、しないとどうなるのか。
知らない上に漠然とした恐怖も手伝って、敬遠してしまうようです。

知らなければ選択もできません。
「自己選択・自己決定」のため、正しい情報を提供することも医療、福祉に携わる者の役割だと感じています。

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キーワードは 胃ろうより慰労?

寺田次郎 関西医大不名誉享受

おめでとうございます。胃ろう増設の適応に関して、各学会で慎重を要するコメントが出ていますね。それらが実行されるのにはまだまだ時間がかかるとは思い...

おめでとうございます。
胃ろう増設の適応に関して、各学会で慎重を要するコメントが出ていますね。
それらが実行されるのにはまだまだ時間がかかるとは思いますが、宮本先生などが訴えていった結果だとは思います。
読売新聞とはいえ、インターネットでの記事ですから、目にされる方も限られてくるとは思いますが、違和感を感じていることを訴えて続けていくというのは大事なことかもしれませんね。

ところで、先日、宋文州さんがツイッターで仰られていました。
核や軍備をめぐる問題で「結局最後は人間の心の問題だ。引き金を引くのは人間だ。」と。

これって医療にも言えるかもしれません。

ものや技術は人間の判断なしに悪さをしません。

確かに「あったら使いたくなる」のは人のサガで、あるがゆえの不幸というものはあるかもしれません。
けれども、根拠はありませんが、ないよりはあった方が良いと思います。
時に出てくる人間の弱さを封じ込める仕組みを考えていけばいいだけのことですから。

とはいえ、現実にそれを作って実行していくのは大変かもしれないですね。

頑張ってください。

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