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[桐島洋子さん]私塾で語る 波乱万丈

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森羅塾では、受講者と輪になって語り合う。「肉声が届く近さがいい」(東京都目黒区で)=佐々木紀明撮影

 ジャン・コクトーの線画やアンティーク家具が置かれた居間に、女性たちが集まる。30歳前後から70歳近いと思われる人まで、20人余り。その輪の中に座り、語りかける。

 東京・中目黒の自宅で、一般の参加者を集めて、自身の人生経験などを話す「森羅塾」を4年前から開いている。医師による健康講座やヨガ教室のほか、外部の会場でのハープコンサートなど、内容は様々だ。熟年世代を中心に、知識欲を満たしながら、人生を豊かにする助けとなる講座を目指しているが、受講者の中には、その奔放な生き方に共感する若い女性も少なくない。「同じ関心を持つ人が集まることで、新しい縁が生まれるといい」と言う。

 文芸春秋新社(当時)の記者として仕事に打ち込んでいた20代半ば、世界的に有名なダイバーだった米国人の退役中佐と恋に落ちた。だが、相手には離婚係争中の妻がいた。未婚のまま、27歳で出産。「女性が結婚すると、退職するのが当たり前の時代。急性腎炎と偽って休暇をもらい、会社には内緒で産んだのよ」

 翌年に会社を辞めてフリーになり、ベトナム戦争の従軍記者などを経験。3人の子どもをもうけたその恋人と別れ、渡米した。「夫婦交換パーティー」に潜り込み、10代の未婚の母たちが暮らす施設を訪ねるなど、体当たりの取材をし、帰国後、「淋しいアメリカ人」を執筆。自由と繁栄の陰で、絆に飢えた人々があふれる米社会の実態に迫り、1972年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

 一見、破天荒な生き方は、神奈川県葉山町の海辺で育った少女時代が原点だ。「大波に対して身構えれば、容赦なくたたきつけられるが、力を抜いて身を任せれば、ふわっと乗り切ることができる」。岐路に立つ度に、状況と自分の直感に従って進んできた。

 波乱の半生は、末子の米国留学を前に、奮発して出かけた親子4人の世界旅行で転機を迎える。旅先で出会った人から、インドでは、一生を、勉強に励む「学生(がくしょう)期」、働き盛りの「家住(かじゅう)期」、仕事を離れて人生を振り返る「林住(りんじゅう)期」、終末に備える「遊行(ゆぎょう)期」の四つに区切る考え方があることを教えられた。

 「子育てを卒業した今こそ、まさに林住期」と考え、50歳の時、カナダ・バンクーバーの森と海に近い場所に家を買った。仕事を減らし、1年の3分の1をそこで過ごした。車を持たず、木々のざわめきや波の音を聞く日々。「エンジンがなく、気流に乗ってゆっくり旋回するグライダーのような生活だった」

 自然と調和した暮らしを20年ほど楽しむと、今度は「日本でもうひと働きしたい」という気持ちがわき上がった。「知識も資金も人手もないまま、ほとんど思いつきで森羅塾を始めた」

 現役時代のようなしがらみがなくなる熟年期こそ、思い通りに生きる好機と説く。

 「年を取るのもなかなかよいものよ。自分の心や体が何を望んでいるのか、『内なる声』に耳を傾けて」(飯田祐子)

 きりしま・ようこ ノンフィクション作家。1937年、東京生まれ。モデルの桐島かれんさんら2女1男。著書に「50歳からのこだわらない生き方」(だいわ文庫)、「女が冴えるとき」(グラフ社)など。乳がん予防を始め、女性の健康に関する啓発活動を行う「オサン・デ・ファム」代表理事。

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