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演歌歌手 大江裕さん 22

一病息災

[演歌歌手 大江裕さん]パニック障害(3)舞台に立つ喜びを再び

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 2011年は年明けから一切の仕事をキャンセルして治療に専念した。

 しかし病状は容易には改善せず、部屋にひきこもり、横になっていることが多かった。一日が長く感じられ、様々な思いが頭をよぎった。

 「歌おうという気持ちがプッツリと途切れてしまった。歌手をやめなきゃいけないかなと思いました」

 活動停止から半年以上たった同年8月、北島三郎さんの付き人を務めることになった。当時、症状が少し改善したものの、歌手として復帰できる状態ではなかった。

 「無理はしなくていい。人前に立つこと、舞台に立つことの喜びをもう一度思い出させてやりたい」。北島さんの気遣いだった。

 同年9月の名古屋、11月の大阪と、北島さんに付き人として同行した。

 出身地である大阪公演の最終日、ステージの北島さんに「北島ファミリーの一人が体調を崩していま付き人をやっています。裕、出ておいで」と急に呼ばれた。ステージに出ると北島さんが「あせることはない。一歩一歩、歩いていこうな」と励まして、「言うことあるだろ」と耳打ちした。

 ドキドキしながら「恐れ入ります」と一言。大爆笑が起きた。腰の低いキャラクターを象徴する、おなじみのフレーズだった。

 「僕のたった一言で、あんなに笑ってくれるなんて。うれしかった」

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