医療部発
医療・健康・介護のコラム
マインドフルネスで「暑さ」に強くなった

マインドフルネスは、もともと初期仏教の瞑想法のテクニック。2500年ほど前、お釈迦様が、人びとが幸せになれるように作り上げた技術です。ですから、うつ病や不安障害など心の病気の人だけでなく、だれもが使えて何らかの効用を得られるテクニックだと言えます。
では私自身、マインドフルネスを知って、どんな「いいこと」があったのでしょうか。
昨日のブログでも例として挙げた「怒り」を抑えられるようになった。「自慢したい!」「良く思われたい!」という「欲」に気づくようになった。いろいろありますが、今の時期に、いちばん分かりやすい事例を挙げましょう。
それは、「暑さ」に強くなったことです。
私は、ものすごく暑がりです。寒いのはけっこう強いけど、暑さには弱い。だから、四季の中で順位を付けるとすると、(1)秋(2)春(3)冬(4)夏の順でした。電車でも「弱冷房車」は大嫌いです。
しかし、マインドフルネスを自分なりにやるようになってからは、こう変わりました。
午後2時ごろ、会社から外に出るとします。近年の東京の夏は特に、ものすごい日差しと、ムッとする湿気が襲ってきます。
これまでなら、「あっつい!」→「この暑さは本当にかなわんなあ」→「だから夏は嫌いなんだよ」→「早く秋が来てくれないかな」→「ああ、それにしても暑過ぎる! 嫌だ嫌だ…」などと、暑さを拒絶・否定する感情と思考が次々と湧いてきていました。
でも、今は違います。
まず、「いま、『暑い』と感じている」と気づきます。次に、皮膚の感覚を味わいます。ジリジリと皮膚が刺されるような感覚。皮膚の表面の温度が上がり、少しほてっている感覚。じんわりと汗がにじみ出てくる感覚…。
次に、気持ちを見つめます。すると、たしかに「不快だ」「この暑さは嫌だ」と思っていることに気づきます。
こうしてしっかり観察するだけで、もうほかの感情は湧いてこないのです。ネガティブな感情へと進むことはない。そして間もなく、「嫌だ」という感情すら消えていきます。
自分の周りに「暑さ」という現象があり、自分はその暑さを感じ、それを「不快で嫌だ」と思った。それ以上でもそれ以下でもない…。

数日前に外出した時も、とても暑かったのですが、この時は、ふと、日差しの「明るさ」に気づきました。痛いほどの暑さなのですが、同じ太陽の光が産み出したこの明るさだけを見ると、けっして不快ではない。雨でどんよりと曇っている時に比べると、むしろ気持ちがいいぐらい…。
以前なら、暑さへの嫌悪に隠れて気づかなかった、そんなことにも気づきました。
こうして私は、今では夏がそれほど苦手ではなくなりました。
何十年もの間、毎年、夏の暑さにすっかり参っていた私にとって、この変化はけっこう画期的なことなんですよ!

山口博弥(やまぐち・ひろや) 1997年から医療情報部。胃がん、小児医療制度、高齢者の健康、心のケアなどを取材してきた。自称・武道家。
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山口博弥記者が担当した連載「医療ルネサンス[シリーズこころ]マインドフルネス」は、下記のリンクからご覧になれます。
(1)うつ病治らず新治療へ
(2)嫌な感情を受け入れる
(3)DV被害の母子をケア
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