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オトコのコト 医師・小堀善友ブログ

妊娠・育児・性の悩み

オリンピックとオトコとオンナ2

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 ついに、ロンドンオリンピックが終わってしまいました。日本は過去最高の合計38個のメダルを獲得するという大活躍でした。選手のみなさま、お疲れさまでした。

 前回のお話は、性染色体ではXYという男性型の染色体を持っていたにもかかわらず、男性ホルモンを利用することができない状態(アンドロゲン不応症候群:CAIS)であったために体が女性となってしまったスペインのハードル選手、Maria Jose Martinez ‐ Patino(マリア・ホセ・マーティネス-パティーニョ)さんは男性なのか、女性なのか、という話でした。

 1936年のベルリン大会までさかのぼると、男性が女性と偽ってオリンピックの女性競技に参加するという報告が残っています。

 その後、男女の差を区別するために、外陰部の形を医師が診断したり、毛の生え方のパターンで判別するようになりました。しかし、科学的にさらに精密に検査するために染色体検査を施行するようになり、その後はSRYという精巣を発現する遺伝子まで調査されていたようです。1996年のアトランタ大会では、8人の女性がこのSRY試験陽性、つまり「男性」という検査結果でした。

男性ホルモンで性別決定?

 しかし、染色体や遺伝子検査でも万能ではないという議論があり、海外での報道によると、今大会からはDNA検査からテストステロン(男性ホルモン)を調査する新しい検査方法で性別試験をしているようです。テストステロンは、筋肉量を増やしたり、性欲の増進やある種の男性的な攻撃性や気の短さ、怒りっぽさをはじめ、「物事のとらえ方」や「思考パターン」、「決断力」などの、「男らしい考え方」に影響すると言われています。テストステロンが多いスポーツ選手の方が、ジャンプ力が強いという研究もあります。ホルモンによって、「男性」もしくは「女性」といったカテゴリーに分けようという試みなのです。

 男性ホルモンがある一定以上の値を超えているヒトは男性と診断されます。逆に、ある一定以下のヒトは女性となります。マリアさんのように、男性ホルモンを利用できない体を持ったヒトは「女性」というカテゴリーに分類されます。

 つまり、彼女はDNA検査では男性と分類されるのですが、ホルモンの検査では女性であるというのです。人間自身のアイデンティティの最も重要であるような性別がそんな検査一つで変わってしまう、というのもおかしな話であると考えます。

 ちなみに、いったんは「男性」と判断されたマリアさんですが、不服を訴え、国王や専門医の尽力もあり、その後、「女性」として認められたそうです。

オトコになるには

 そもそも、男と女というものは全く違う生き物なのでしょうか? 私はそう考えておりません。

 実は、人間は男性ホルモンが分泌されないと表現型(心身の状態)は女性となってしまうのです。まるで、男性ホルモンが出ていてもそのホルモンを利用できない体だったために女性となったマリアのように。男性ホルモンの働きは、筋肉を作ったり、性格を男らしくするだけでなく、体つきを「オトコ」として作り上げる働きがあるのです。つまり、男性の体は男性ホルモンを利用して女性の体を改造して作られたもの、ともいえます。オトコとオンナは、全く違う対をなす生き物ではなく、つながっているとも考えられるのです。

 男性と女性との違いとはいかがなものか? さらに、男性とはどのように作られるものなのか? 次回はその話を続けていきたいと考えております。

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小堀善友 (こぼり よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。詳しくはこちら
主な著書は『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。詳細はこちら

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1件 のコメント

遺伝子と環境

寺田次郎 元関西医大放射線科

「病気」の原因は大きくこの二つに分かれます。産婦人科の北村先生の「草食男子」とも話は重なりますが、先生の今回の文章とも大きく関係があります。人間...

「病気」の原因は大きくこの二つに分かれます。

産婦人科の北村先生の「草食男子」とも話は重なりますが、先生の今回の文章とも大きく関係があります。

人間の本来性は女性で男性は作りものです。
しかし、労働社会的には腕力と脆弱期間(出産・子育て期間)の少ない男性優位社会です(良いか悪いかは別として)。

そんな中で、家事を義務付けられた女性ですが、家電の発達とともに家事から解放されます。

すると、子供に干渉する時間が増えます。

これは現代日本の草食化の問題と大きな問題があると思いますし、今後他の国でも増えていく問題でしょう。

変わりゆく環境の中で男女の役割や性質は変わると思います。

とはいえ、旧世代の男性が長生きしていることもあり、今後もこじれてしまいそうな予感です。

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