文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

救急の現場から

からだコラム

[救急の現場から]どこかでみんな考え違い

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「患者さんの年は、いくつだって?」

 「女性、92歳です」

 「で、ADL(日常生活動作)は?」

 「ここ数年、寝たきりの状態で、意思の疎通も難しかったようですね」

 救急指令センターの司令官によれば、少量のおかゆを口にした後、呼吸が苦しそうになり、その後、意識がなくなったので、同居している患者の娘さんが、救急車を要請したとのことであった。

 「で、何で、それが救命救急センターへの収容要請になるの?」

 特にかかりつけ医とかがいるわけではなく、臨場した救急隊が近隣の救急病院にいくつかあたったところ、いずれも、ベッド満床や処置困難という理由で、収容を断られていた。

 「待て待て、こういうのは救急っていうのとは違うと思うんだが」

 いいか、救急というのはだな、突発・不測の病態に陥った場合を言うんであって……。

 「先生のおっしゃる通りなんですが、何分、ご家族が積極的な治療を希望されておりまして」

 齢(よわい)90歳を超え、寝たきりになってしまっている人間に対する積極的な治療とはいかなるものなのか、そして、その家族の思いをかなえることが果たして許されることなのか、仮にそれが是だとして、いったいそれは救急医療という名に値するものなのか、にもかかわらず、救急医療の「最後の砦(とりで)」とされる救命救急センターが、その思いを引き受けざるを得ないという現実と、どう折り合いをつけていけばよいのか……。

 やっぱり、どこかでみんな、考え違いをしている。(救急医・浜辺祐一)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

karada_400b

 
 

からだコラムの一覧を見る

救急の現場から

最新記事