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認知症 明日へ

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[告知]「見通し」詳しく伝えて

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 認知症とどう向き合い、今後どう生きるかを考える上で重要な「告知」。だが、医師の言葉や態度に、不満や不信の念を募らせる人も少なくない。本人や家族は告知をどう受け止め、何を望んでいるのだろうか。

患者側 治療法や介護に不安

認知症の家族の集いで、手話を披露する女性。「早期発見と告知のお陰で、新しいことに挑戦できた」と語る(神奈川県で)

 「認知症でも希望があることを伝えてほしかった。あれでは早期診断、早期絶望です」

 51歳の時、認知症と診断された佐藤雅彦さん(58)は憤る。東京近郊の精神科の診察室で、医師は問診後、撮影した脳の画像を見ながら唐突に切り出した。「アルツハイマーですね」

 予期せぬ言葉に頭の中は真っ白になった。コンピューター開発会社に勤めていたが、その数年前からパソコンの入力が苦手に。配送担当に替わったものの、配達先で方向がわからなくなり、心配になって受診した。

 病名を告げた医師から、それ以上の詳しい説明はなかった。「自分はどうなるのか。仕事は続けられるのか……」。疑問や不安が次々浮かんだ。佐藤さんは「本人の立場に立った説明がなければ、何のための告知でしょうか」と問いかける。

 2006年、夫(64)がアルツハイマー型認知症と告げられた神奈川県の女性(53)も、医師の対応に不信感を抱いた一人だ。家族の意向に構わず、本人への告知を急ごうとする医師にその訳を尋ねると、「病院の決まりです。どうせ告知しても忘れるけれど」と言われ、あぜんとした。「大切な夫に、あんな医師から告知されたくない」と思い、別の病院を探した。

 幸い、別の病院の医師は違った。夫の顔を見ながら、「治らないが、薬で進行を遅らせることはできる。どんな心配事でも私に相談してください」と言った。女性は「心のこもった言葉に、元気も勇気も出た」と話す。告知を機に、夫と将来について話し合うこともできた。夫は「家族、友人と楽しく生きていきたい」「無駄な延命(治療)はせず、自然のままいきたい」など、自分の願いをパソコンに書いて家族に伝えた。

 告知を機に、生き方を変えた人もいる。神奈川県の60歳代の女性は、約2年前、物忘れが増えたことを自覚し、受診したところ、「初期のアルツハイマー型認知症の可能性がある」と告げられた。専業主婦で、趣味は美術館巡りや植物観察など。だが、症状が進むといろいろなことができなくなると知り、「まだ今なら新しいことができる。これまでとは違う自分を生きよう」と決心。手話を覚え、認知症の人や家族の交流会で歌とともに披露するまでになった。

 女性は「人前で歌うなんて以前は考えられなかった。今は前向きに生きていきたい」と笑顔を見せる。(野口博文、小山孝)

家族4割 告知に不満

 告知について、人々はどう思っているのだろうか。

 国立長寿医療研究センターの荒井由美子・長寿政策科学研究部長が全国の約2000人に実施し、2007年に公表した意識調査では、自分が認知症になった時、「告知されたい」と答えた人は81%に上った。一方、「家族に介護で負担をかけるのがつらい」と答えた人は69%いた。荒井部長は「負担が和らぐよう、今後の生活や介護の道しるべとなるような説明を医師に期待している人が多い」と指摘する。

 だが実際は、告知に不満が残る場合が少なくないようだ。首都大学東京の繁田雅弘教授(精神医学)らが介護経験のある家族約400人を対象に10年に行った調査では、認知症と診断した医療機関について、4割近くが「満足していない」と回答。告知された時に、今後の見通しや治療法を求める声が多いが、そうした説明が得られない時に不満を抱くこともわかった。

 繁田教授は「言い方や態度、タイミングで告知が満足のいくものにも不満足にもなる。患者側の気持ちを医療者側がどれだけくみ取れるかで決まる」と話す。

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