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基調講演(2)身に付いた生活習慣、どう変えるか…鎌田實さん

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 私は1974年、諏訪中央病院に赴任しました。当時は、累積赤字4億円でつぶれそうな病院でした。

 長野県は秋田に次いで全国で2番目に脳卒中の多い県でした。長野県にはその頃、17の市があったのですが、諏訪中央病院がある茅野市は、市の中では最も脳卒中の死亡率が高い地域でした。

 病院もお医者さんが来なくて崩壊寸前、そして地域住民は不健康で早死に。三重にも四重にも悪いことが重なっていました。

 そこで僕は、こう考えたんです。もし僕が茅野市の市民だったら、何をしてもらいたいだろうかと。そこで、脳卒中になったら嫌だな、できたら脳卒中にならないようにしてほしいなと思うと考えました。

 どんなに病院を充実させて、脳外科を置いて医療を充実させても、脳卒中になっちゃうと、かなりの確率で障害が残る。生かしてくれたけど、障害が残ったり寝たきりになったりして生きていくのはつらい、自分の家族がそうなったら、やはりつらいと思ったんですね。

脳卒中にならずに済む町に…各地に出向き、勉強会開く

 じゃあ、脳卒中にならないで済むような町にしたいと思って、仕事が終わってから年間80回、食生活の改善など、健康づくりをテーマにした話をしに、各地に、他の医師たちと手分けして出向いたんです。病院に医者が閉じこもるんじゃなくて、病院から外へ出ていくことが大事だと思ったんです。

 勉強会には、女性の皆さん、特に主婦の人が来てくれました。男はお酒が出る席には来るけど、比較的、お酒が出ない勉強会なんかには来ないですね。そして、勉強会が終わると、おばさんたちは、「いい話で胸に落ちた、納得できた」「先生の話はわかりやすい。よく分かった」と、褒めてくれました。

 ところがです。勉強会終了後の懇親の場に、山盛りの野沢菜が出てきます。

 勉強会の中で、何度も何度も、塩分の取りすぎが悪い、塩、みそ、しょうゆの取りすぎが悪いと言ったのに……。塩分の多い野沢菜に、おばさんたちはおかか(カツオ節)をかけて、その上におしょうゆをどどどっとかけて出してくるのです。

 行動変容という言葉があります。その人の行動パターンを変更することです。生活習慣を変えることを、行動変容を起こすといいます。でも、人間というのは、一度身についた生活習慣を変えるのはとっても難しいものです。頭でわかっていても、体が言うことを聞かないんですね。

頭で分かっていても、体が言うこと聞かない

 問題のある生活習慣の一つひとつが脳卒中や心筋梗塞などの病気を引き起こします。脳血管性の認知症にも高血圧が関係してきます。こういう話をして、頭ではいったん理解できたとしても、おばさんたちはやっぱり野沢菜を出しちゃうわけですよね。

 行動変容を起こすには、まずその人が「これを改めよう」とはっきり意識しないとダメです。テレビ番組を見るだけでは、行動変容は起きにくいですね。何となくいいと思っても、番組が終われば、忘れてしまう。行動変容には結びつきません。

 顔と顔を突き合わせて直接聞いた話とか、本を読んでいて線を引いた内容のほうが、行動変容を起こす力を持っています。僕は新聞を読んでる時、大事なところに印を付けたり、切り抜きをしたりして、忘れないようにする習慣があるんです。そのようにしっかり意識付けすることがポイントです。

 僕の話を聞いたのに野沢菜を出してきた勉強会の参加者にも、行動変容が少しずつ現れてきました。翌年になると、野沢菜の代わりにリンゴが出てくる。3年目ぐらいになると茅野市の特産の寒天が出てきました。

 みんな健康でいたいし、脳卒中にもなりたくないわけです。認知症になりたくないわけです。生活習慣の問題点を理解し、「これからは、これを改めよう」と思うものを見つけたら、それを行動変容に結びつけることが大事です。(続く)

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