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救急の現場から

からだコラム

[救急の現場から]「子どものアザ見たら虐待疑え」

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 「どうしましょうか、先生」

 5歳の男児である。連れてきた母親によれば、家の中で何か悪さでもしていたのであろう、それを見とがめた父親にゲンコツを食らわされ、その勢いで後ろ向きに転倒し、後頭部を柱に打ちつけてしまったということであった。

 「傷は?」

 「頭の中も、特に異常ありませんし、打撲だけだとは思うんですが……」

 診察にあたった医者は、虐待の可能性を考えているらしい。「自分も子どもの頃はよくおやじにゲンコツをもらいましたからね、それをしつけだと言われれば、その通りなんですが、かと言って、果たして、親がどこまで本当のことを話してくれているのか」

 勘ぐればキリがないと、その医者は顔を曇らせた。「もし疑わしいんだったら、ケースワーカーに入ってもらうけど」

 虐待を見逃さないために、病院の虐待防止委員会が作った「疑わしきは積極介入」を旨とするマニュアルがある。

 「もちろん、子どもを助けるためなんですが、だけど、そのために親を疑ってかかっている自分が、何だか人様を信用できないとっても嫌な人間になり下がってしまったような気がして……」

 『女性を見たら妊娠と思え』というのが、救急をやっている臨床医の心得だと、昔から教えられてきた。それに加えて、『子どものアザやヤケドを見たら虐待を疑え』というのが、昨今の流行である。

 どうやら、救急の現場に長くいると、随分と良からぬ目つきの人間になってしまうようである。(救急医・浜辺祐一)

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