宋美玄のママライフ実況中継
コラム
カンガルーケア、誤解しないで
先日、周産期新生児学会の学術集会があり、参加してきました。初日に柳田邦男さんの講演があって聴きたかったのですが、学会場の託児所はすでにいっぱいで、日曜日で他に子供を預けるところがなく断念しました。翌日から参加したのですが、抱っこひもで赤ちゃん連れで参加している人もちらほらいました。
いろんなセッションを聴いて、周産期医療に関わる人たちは一人でも多くの赤ちゃんを少しでも良い状態で助けたいと日々努力し、学会のような場で情報共有しコンセンサスを図っていることを改めて感じました。時々、出産において医療は邪魔者扱いされるので、私たちはお節介なことをしているのではないかと思わされることがあります。また、産科医療は訴訟が多いから、防衛的に医療介入をされてしまうのだと言われることもあります。しかし私たちの根幹は、純粋に一人でも多くのお母さんと赤ちゃんを救いたくて医療をしているということなのだと再確認しました。
同名のケアと混同されることも
今回の学会で話題になっていたことの一つが、早期母子接触(early skin to skin contact)です。出産後すぐに母親の胸元で皮膚と皮膚を触れ合わせることですが、「カンガルーケア」という表現が使われることが多く、NICUでの同名のケアと混同されることがあります。
また、赤ちゃんをタオルで巻いたままだったり、赤ちゃんをコット(新生児用のベッド)に寝かせてお母さんの隣に置いただけでも「カンガルーケア」と呼んでいる施設もあり、用語や意味合いが混乱しているようです。読者の皆さんはおそらく報道でこの用語を目にしたことがあるのではないかと思います。
早期母子接触は、母親が赤ちゃんに愛着が湧く、育児に自信が持てる、完全母乳栄養率が高くなるというデータがあるのですが、昨今の「カンガルーケア中の事故」などの報道でマイナスイメージを持っている人も少なくないと思います(以前にこちらのブログでカンガルーケアを取り上げた時も賛否両論のコメントをいただいたように思います)。
新生児の急変は同じ確率
しかし、以前の記事の繰り返しになりますが、誤解しないでいただきたいのは、生まれて間もない新生児は呼吸や血液がめぐる臓器の順番が大きく変化するので、もともと不安定なのです。早期母子接触をしてもしなくても新生児のその後の状態は同じで、つまり早期母子接触をしなくても同じ確率で新生児の急変が起こっているのです。
最近、「カンガルーケアの最中に赤ちゃんの呼吸が止まり、死亡するケースも出ているので、学会が安全対策を徹底するよう促した」と報じるニュース番組がありました。この報道によって、カンガルーケア自体が危険で、ケアさえしなければ死亡するケースはないかのように誤解されるのではないかと、学術集会でも話題になりました。
私もそのニュース番組を見ましたが、確かにそれだけを見ると「カンガルーケア」が原因で赤ちゃんが急変したように受け取られると思います。問題は本来不安定な新生児をちゃんと観察し続ける体制でなかったことなのに、ケアそのものが危険だと誤解されるのはとても悲しいことです。学会ではカンガルーという単語が「本来安全なもの」というイメージで誤解を招く、用語を検討しなければいけない、と意見交換がなされていました。
出産後24時間は特に注意

私自身の経験でもそうでしたが、出産直後というのは非常に疲れており、赤ちゃんを胸に抱っこする力がなかなか出ないという人も多いと思います。「ぜひ早期母子接触がしたい」と言う人もいれば、「疲れているのに産院からおしつけられて嫌だった」という人もいます。今後、出産する方は、ケアの間ちゃんと母子を観察してくれるかどうかなど十分に説明を受けてから、自分が希望するかどうか決められるといいと思います。ただ、出産後に気持ちが変わる可能性もあると思うので、事前に決めきれないとも思うんですよねえ。
とにかく、出産は産まれて終わりではなく、母体も赤ちゃんも直後から24時間くらいは急変することが十分あり得るということを知っておいていただけたらと思います。
難しい問題ですね。
2児ママ
私の出産した産院では、生まれた瞬間?取り出した瞬間におなかの上においてくれました、1秒位でしょうか、その直後に肺の水を吸ったり何やら処置みたいの...
私の出産した産院では、生まれた瞬間?取り出した瞬間におなかの上においてくれました、1秒位でしょうか、その直後に肺の水を吸ったり何やら処置みたいのをしてさっとふいてヘソの緒がつながったまま胸の上において、夫にヘソの緒を切らせてもらえました。
出てきた瞬間、一瞬でも真っ先に自分の胸に来てくれたのがとてもうれしかったのを覚えています。
結構抱っこさせてくれている用にみえて、この間はほんの3~5分程度だと思います。
でも、その数分がものすごい宝物に感じました。
ちゃんとした施設・設備・そして助産師さんがいてくれていれば、絶対カンガルーケアはあったほうがいいです。
あの感動は、今でも鮮明に思い出せます。
ただし、安全である場合のみです。
カンガルーケアしてもいいけど、赤ちゃん危険な状態だよ?なんて言語道断です。
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真冬と真夏に出産経験者ですが
ブルーベリー
そもそもカンガルーケアとは後進国での出産で援助隊が考え出した苦肉の策で保温設備のない産室で母親の体温を新生児に過不足なく与えるためと、産褥婦を見...
そもそもカンガルーケアとは後進国での出産で
援助隊が考え出した苦肉の策で
保温設備のない産室で母親の体温を新生児に過不足なく与えるためと、産褥婦を見る目が一人しかいないような場所で両方を観察できる利点が優先してできたと 聞き及びます。
厳冬期の灯油の少ない大雪の中での出産時
自分の産んだ子を胸にあげてもらってあったかいなあと感激し、 真夏の早朝、
病院の開け放たれた窓から聞こえるカッコーの鳴く声とわが子の産声を聞きつつ お腹に乗っかった我が子のお尻がちょっとひんやり冷たくて
助産師さんに告げると 体温調節がまだできないせいだから 数分ちょっとお母さんであっためておいてね と声掛けがあって 階下の小児科の保育器に連れて行かれるまでの数分の初対面でした。 新月の晩一晩で8人生まれたそうです。
検査が済んで 母子同室が原則なので連れてこられた時にはすでに子供の目は開いていて
カッコーの声を聞きながら生まれた子は
今既に母親となって また母の喜びを味あわせてもらっています。
冬生まれの子も育たないかしらと思いつつも
これから厳しい世の中を渡ってゆかなくてはならない、そんな第一声を 母親と同じひんやりした空気を胸いっぱい吸い込んで元気に泣きました、
同じ朝出産したお母さんたちと今でも交流できてますが、 お産は いくら科学が進もうとも、
母子の安全が第一ですが、たとえ1分でもいいから母親の手に抱かせてもらえてぬくもりをお互いに共有できたら その後の人生が温かく始まるのだと思いますがいかがでしょうか。
(二人の子供たちは生後1週間のうち3,4日ずつ保育器で管理されました)
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行為の事実と名称とリスク・・・
寺田次郎 関西医大73期
行為の名前とその行為の意味とリスク。統計学的なデータの正誤はひとまず置いておいて、知識が正確に共有できないのは良くないことかもしれません。僕自身...
行為の名前とその行為の意味とリスク。
統計学的なデータの正誤はひとまず置いておいて、知識が正確に共有できないのは良くないことかもしれません。
僕自身もカンガルーケアの意味は分かってなかったのですが、どう考えても優先されるべきは母子の安全で、それが確保されたと確証が持ててからプラスアルファでなされることだと思います。
ただし、安全だと思われる状況であっても、地上に出るという一大作業を終えた直後の新生児が急変するのはそんなに稀ではないことと思います。
これは、何もカンガルーケアに限ったことではないかもしれませんね・・・・
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